「幸いです」の言い換えと例文

目上の人に対して「幸いです」という表現を用いるのがよろしくないのであれば、どんな表現がふさわしいのでしょうか。

ここからは「幸いです」の言い換え表現をいくつか紹介していきます。

「幸いです」に代わる敬語「幸甚です」

「幸いです」に代わる敬語として「幸甚(こうじん)です」という表現があります。「幸甚」は、「この上なく幸せ」「非常にありがたく思う」という意味ですから、「幸いです」よりもさらにうれしいということを示す丁寧な表現と言えます。同僚や対等な立場にある相手に対しては「幸いです」を、相手が目上の人の場合には「幸甚です」を用いるとよいでしょう。

同僚や対等な立場にある相手に……
・「本日中に提出していただけると幸いです」

目上の人に……
・「明日までにお返事いただけると幸甚です」

「幸いに存じます」「幸甚に存じます」

「幸いです」よりも「幸甚です」の方がより丁寧な表現ですが、文章がとても硬い印象になってしまいます。丁寧かつやわらかい表現にしたいのであれば、「幸いに存じます」がおすすめです。また、より強い敬意を表したいのであれば、「幸甚に存じます」とするのもよいでしょう。ちなみに、「存じます」は「思います」の謙譲語ですから、どちらも目上の人に対して使うのにふさわしい謙譲表現になります。

・「プレゼンの資料を今一度ご確認していただけると幸いに存じます」
・「なお、懇親会の席にもご出席いただけると幸いに存じます」

より強い敬意を表す場合……
・「お時間の許す限り、ご高覧賜りましたら幸甚に存じます」
・「新しいプランを作成して参りましたので、再度検討していただけると幸甚に存じます」

  • 幸いです

「助かります」「ありがたいです」

「幸いです」のよりくだけた表現に、「助かります」「ありがたいです」があります。同僚や対等な関係にある相手に、メールや文書で依頼するのであれば「幸いです」を使うのが一般的ですが、電話や会話では「助かります」「ありがたいです」を用いてもよいでしょう。ただし、かなりくだけた表現になりますので、距離感の近い相手に限定して使うようにしましょう。

距離感の近い同僚や対等な立場にある相手に(おもに口語)……
・「この資料、明日までにまとめてもらえると助かります」
・「明日の仕事、代わってもらえるとありがたいです」

「どうぞよろしくお願いします」

相手に依頼をする意味での「幸いです」のカジュアルな表現として「どうぞよろしくお願いします」もあげられます。目下の人や同僚相手に丁寧にお願いするときに便利なフレーズです。

ただ、依頼以外の意味合いでも使用可能ということもあり、「幸いです」よりも強制の度合いは薄まっていると言えるでしょう。

目下の人や同僚相手に(おもに口語)……
・「午後の会議の議事録作成、どうぞよろしくお願いします」

ビジネスシーンでの「幸いです」の使い方の注意点

なにかと使い勝手がよい「幸いです」という表現ですが、便利な反面、注意したい点もいくつかあります。ポイントをまとめてみました。

依頼するうえでの確実性に欠ける

「幸いです」は「~してもらえるとありがたいです」というような間接的な依頼をできる表現ではありますが、その依頼に対応する・しないの選択は相手に委ねられます。

たとえば、「○日までに納品していただけると幸いです」と依頼した場合、「○日までに納品してもらえたらうれしいけれど、○日を過ぎても構わない」という少々曖昧な意味に受け取られてしまう可能性があります。

つまり、「幸いです」という言葉には「できればで構いませんので」というニュアンスが含まれているのです。そのため、「必ず実行してもらいたい」場合に使うべき言葉ではない点に注意しましょう。

会話での使用には向かない

ビジネスで頻出の「幸いです」ですが、使用シーンの大半はメールです。会話で用いても間違いではないですが、堅苦しい印象を相手に与えてしまいます。そのため、メールや手紙などの文書での使用をおすすめします。

どうしても会話で使いたい場合は「~してもらえると助かります」「●●を用意するようお願いします」などの言い換え表現を用いるとよいでしょう。

「幸いです」の正しい使い方をマスターしよう

今回は、「幸いです」の使い方と類語をご紹介しました。「~してください」という断定的な言い方を避けた柔かい表現ではある反面、「してもしなくてもいい」という非常に曖昧な言葉でもあります。また、目上の人に使う場合には注意が必要です。そのことを理解した上で、正しく賢く使い分けするようにしましょう。