ボーイングとエンブラエルは現地時間の7月5日、世界の航空宇宙市場のさらなる成長を目指し、戦略的パートナーシップを構築する覚書を締結したと発表した。新たな合弁会社のもと、エンブラエルの民間航空機とサービス事業は、ボーイング民間航空機の開発・製造・マーケティング、およびライフサイクル・サービス業務と、戦略的に提携していく。合弁会社におけるボーイングの持ち株比率は80%、エンブラエルが20%になる。
今回の合弁会社は、ボーイングの包括的な設計・製造・民間旅客機のサポートのための中核的拠点の一角となり、ボーイングの広範囲な生産とサプライチェーンに完全に統合される。ボーイングと合弁会社は、70席から450席以上までの民間旅客機と貨物機を高度に補完する包括的なポートフォリオを提供し、クラス最高の製品とサービスによって世界中の顧客満足度向上を図る。
さらに両社は、防衛部門の製品とサービス分野においても、新たな合弁会社を設立。特に、マルチミッションの航空機であるKC-390を含む防衛装備品とサービスの、適用促進と新規市場の開拓を目指す。
同取引の評価額は、エンブラエルの民間航空機全事業を47億5,000万ドルとし、ボーイングが保有する合弁会社の80%の持ち株は38億ドルと見込んでいる。同提携により、ボーイングの1株当たり利益は2020年から増加し、年間の税引き前費用では3年目までに約1億5,000万ドルのシナジー効果が生まれると予想されている。
今回の戦略的パートナーシップでは、両社合わせて150年を超える航空宇宙産業でのリーダーシップを結集し、高度に補完し合う民間航空機の製品の活用が図られる。同提携は20年以上という長期にわたるボーイングとエンブラエルの協力の歴史から自然に発展したものであり、合弁会社は社長とCEOを含む、ブラジルを拠点とする経営陣が統括する。
今後数カ月間にわたって、戦略的パートナーシップの財務とオペレーション両面の詳細がまとめられ、取引の正式契約にむけて交渉が継続される予定となっている。契約を履行するためには、取引に関して株主とブラジル政府を含む規制当局からの承認を得る必要があり、順調に承認を獲得できた場合、正式契約履行の1年から1年半後の2019年末までに取引は成立すると予想されている。
今回の戦略的パートナーシップによって、両社はより大きな規模・資産・拠点から利益を得ることになる。特に、グローバルサプライチェーンやセールス&マーケティング、サービスネットワークなどの面でも、組織全体でクラス最高の効率性からメリットを享受することが可能となる。さらに、同提携によって製造や開発プログラム全体において、最良のノウハウを相互に共有することができる。なお、同取引はボーイングとエンブラエルの2018年財務見通しには影響しないとしている。
ボーイングの会長・社長兼CEOであるデニス マレンバーグ氏は、「戦略的パートナーシップの構築によって、私たちは両社のお客様や株主の皆様、社員、さらにはブラジルと米国にとって大きな価値を創出する理想的なポジショニングが可能となります。今回の提携は非常に重要で、本業を基盤とした成長への投資と株主の皆様への還元というボーイングの長期戦略に明確に沿ったものです。様々な戦略的な取り決めによって、成長計画の強化と加速を補完することになります」とコメントしている。
エンブラエルのCEO兼社長であるパウロ・セザール・デ・ソウザ・エ・シルバ氏は、「ボーイングとの今回の合意は、航空宇宙業界で最も重要な戦略的パートナーシップになります。これによって、両社ともに世界市場におけるリーダーシップを強化することは間違いありません。ボーイングとの事業提携は、ブラジルの航空宇宙産業に好循環を生むことが期待されます。潜在的な需要と生産を高め、雇用を創出して収入や投資、輸出を拡大し、さらにはお客様、株主の皆様、従業員への付加価値をもたらすでしょう」とコメントしている。