外国人女性として初めて将棋の研修会に入会し、2017年に男女通じて史上初となる外国人棋士となったカロリーナ・ステチェンスカさん。同年4月には女流1級に昇級し、女流棋士として活躍している。

ポーランドの首都ワルシャワに生まれた彼女が、どのようにして将棋に興味を持ち、日本へとやってきたのか。日本での暮らしと発見、そして棋士としての将来像などをたっぷりと語ってもらった。

  • 史上初の外国人棋士であるカロリーナ・ステチェンスカさん

    史上初の外国人棋士であるカロリーナ・ステチェンスカさん

数学とパズルが好きな少女だった

――カロリーナさんは小さい頃はどんなお子さんだったんですか

勉強だと数学が好きで、数字ゲームやパズルをよくやっていました。チェスも好きでしたね。周りの女の子はお化粧品とかに夢中だったけど、私はちょっと違ってた(笑)。私と似たような好みの女の子とよくパズルをして一緒に遊んでいましたね。男の子ともよく遊んでいました。双子の妹がいるんですが、妹はそんなにパズルは好きじゃなかったから、ゲームでよく遊んでましたね。ポケモン(ポケットモンスター)とか。

――昔から計算やロジックがあるようなものがお好きだったんですね。将棋に出合ったきっかけは何だったんでしょうか

「NARUTO -ナルト-」のアニメでしたね。将棋が出てくる話があって、ポーランドにはチェスがあったけど、「将棋ってどんなのだろう?」と思って。チェスだと取った駒は使えないけど、将棋は使える。そういうところが気になって、すぐにインターネットで調べてネット対戦をするようになりました。16歳のときのことです。それをきっかけに囲碁も4級くらいまでやったんですが、やっぱり将棋が面白くてずっとやるようになりましね。学校から帰ってすぐ将棋をやって、ネット上でもライバルができて。ブラジルの人と詰将棋を何時間もやっていました(笑)。ある意味、その人が私の最初の先生ですね。

――将棋のどんなところが魅力的でしたか

対局がダイナミックなところですね。チェスだとドローになることが多いんですが、将棋はしっかり勝負がつくことがほとんど。やっぱり、取った駒をもう一度使えるところがダイナミックさにつながっていると思います。

日本に行こうと思ったきっかけは

――将棋に魅了されて、日本に行こうと思ったきっかけは

「81Dojo」(日本将棋連盟が後援するオンライン将棋対戦サイト)で、北尾先生(北尾まどか女流二段)の指導を受けたことがきっかけです。将棋が好きで、「もっと強くなりたい」「もしかしたら将棋を仕事にできるかもしれない」――。そう思っていたら、「日本に来てください」と言ってくださって。(東日本大)震災の後だったので不安も無かったわけではないですが、チャンスだったので日本に来ました。日本で改めて将棋に触れて、自分の中で目線が変わったというか、視野が広がりましたね。ワルシャワにも将棋を指せる場はありましたけど、5人しかいなくて日本の道場とは全然雰囲気が違いますから。日本語がわからなくて最初は苦労しましたが、毎日道場に行って将棋をやって……将棋ラブになりましたね。

――女流棋士としてカロリーナさんがいつも大切にされていることは何でしょうか

どんなに強くなって、どんなに有名になったとしても、日本の文化を守っていきたい。そこはちゃんとやっていきたいですね。変えずに、変わらずに将棋を普及させていきたい。少し変えたら、将棋をもっと海外の人にも知ってもらえるかもしれません。例えば、漢字をやめるとか。でも、海外の将棋ファンも漢字をやめてほしくないんですよね。日本の文化としての将棋を大切にしているから。初心者には漢字のないものが良いかもしれないけれど、大会などのちゃんとした場ではやっぱりみんな漢字の将棋でやりたいんですよね。