映画や漫画でよく目にする「ハッカー」という言葉。皆さんはどんな意味かご存知でしょうか。「PCの前に座って何かすごいことをやっている人」や「ハッキングで何か悪いことをする人」なんてイメージが一般的かもしれません。
それって本当に正しい意味なのでしょうか。そもそも「ハッカー」とは職業なのでしょうか。知っているようでよくわからないハッカーの正体について調査してみました。
やってきたのは六本木のとあるビル。扉を開けて入ってみると、そこに広がっていたのはシックでオトナの雰囲気のバーでした。
このお店の名前は「Hackers Bar(ハッカーズバー)」。その名の通り、ハッカーたちが集まってくるバーとして業界ではよく知られたお店なのだとか。
そして今回、お話を伺ったのはハッカーズバーのマスターである浜辺将太さん。元ヤフーの黒帯エンジニアであり、数々のスタートアップでCTOを務める凄腕エンジニアです。
――ずばり本題から伺いますが、ハッカーとはどんな人のことなのでしょう?
浜辺: 説明が難しいですね。ハッカーという職業があるわけではないんですよ。「コンピュータやネットワークの知識・スキルに長けた人」というのが一番近いイメージでしょうか。凄腕のエンジニアのことをハッカーと呼んで称賛したりもしますね。
――映画だと悪役のイメージが多いですよね。
浜辺: ハッカー自体は善悪を表す言葉ではないので、良いハッカーもいれば悪いハッカーもいるわけです。ハッキングで悪事を働く人のことは「クラッカー」、逆に善良なハッカーは「ホワイトハッカー」と呼んで区別する人もいますね。
――なるほど。つまり善悪ではなくて、凄腕のエンジニアやプログラマーがハッカーと呼ばれるわけですね。
浜辺: そうですね。しいていうなら会社員というよりは、フリーランスのエンジニアがそう呼ばれることが多いかもしれませんね。今はプログラムさえ書ければ一人でいろいろなものが作れますし、個人で会社組織と戦える時代でもあります。
――一匹狼で企業と渡り合える技術力を持てるというのはかっこいいですね! まさにハッカーのイメージです。ちなみにハッカーと呼べる人は日本にどれくらいいるのでしょう。
浜辺: 定義がないので数えるのは難しいのですね……今、決めちゃいましょうか(笑)。そうですね、仮にプログラマが100万人いるとして、上位0.1%の実力者をハッカーと呼ぶなら、1,000人に1人。全国に1,000人いることになります。どうでしょう、感覚的には合ってるかも?
――無茶振り質問ですみません(笑)。でも1,000人に1人と言われると改めてハッカーってすごいんだなと思いますね。プログラムのスキルというのは人によってそこまで違うものなのですか?
浜辺: デキるエンジニアとそうでないエンジニアではパフォーマンスが100倍くらい違ってきますよ。すごい人は学習スピードも作るスピードも完成品のクオリティも段違いです。10人の凡庸なエンジニアを雇うよりも、一人の天才エンジニアを雇う方がいいという状況は普通にありえます。
――そ、そんなにですか!
浜辺: 最近は天才採用なんてユニークな取り組みをしている企業もあるようですが、本当に100倍のパフォーマンスをだせるトップクラスのエンジニアを年収1億円で雇えるなら、1人力あたり100万円という計算になるので割安なのかもしれませんね(笑)
――浜辺さんご自身も元ヤフーの黒帯エンジニアというご経歴をお持ちの凄腕ハッカーですが、そんな浜辺さんが働かれているハッカーズバーについても教えていただけますか。
浜辺: その名の通り、ハッカーが集まる店です。逆にいうと「ハッカーに会える店」でもあります。お客さんの半数はエンジニアですが、それ以外の職業の方も、観光客の方も来られますよ。六本木はIT企業が多くて、イベントなどもよく開催されています。イベント終わりにIT企業の米国本社の方が大勢で来ることもありますね。
――仕事以外でハッカーと出会える場というのも他になかなか思いつかないので、本当に唯一無二のお店ですよね。どんな会話が飛び交うのですか?
浜辺: お客さん同士で盛り上がってプロジェクトがスタートするようなこともあるし、僕に相談される方もいますね。こういうサービスを作りたいけどどうしたらいいかとか、会社を作りたいんだけどとか、それこそハッキングされて困っているとか。
――凄腕ハッカーに相談できる駆け込み寺的なお店なんですね! まるで漫画みたいです。ユニークなお客さんも多そうですね。
浜辺: IT業界の最先端で活躍されている方も多いですね。名前は出せませんが、誰もが知っているようなツールを開発された方とか、かつて日本でもっともトラフィックを稼いでいたウェブサイトの管理者の方とか。
――そんなレジェンドハッカーと会えるかもしれないわけですね……! ところでお店のモニターに何やらプログラムっぽいものが映っていますが……。
浜辺: コードですね。ライブコーディングといって、お客さんと話しながら何か即興でプログラムすることもあるんですよ。
――そんなことできるんですか!?
浜辺: さすがに普通はできないと思います。人前でコードを書くことに慣れている人だけの特殊スキルですね(笑)。
――さすがは凄腕ハッカーです……! ところで浜辺さんのようなハッカーになりたい場合はどうすればいいのでしょう?
浜辺: 3ヶ月くらい修行すれば才能があるかどうかわかります。才能とは2つあります。プログラムの習得スピードがすごく速いか、またはスキルを磨くことにモチベーションを保てるか。両方あれば理想ですが、どちらか片方に当てはまっていれば十分目指せるでしょう。両方ともないとさすがに無理ですね。
――我々のような一般人がハッカーから学べることはないでしょうか。
浜辺: 生活や仕事の中で「自分が何に一番時間を使っているか」をまず考えてみてください。次に、その作業の中で「繰り返しやっていること」を探しましょう。それはプログラムで効率化できるはずです。自分がプログラムできないなら誰かにお願いして作ってもらうのもいいでしょう。知り合いにエンジニアがいないという場合は……ぜひハッカーズバーに遊びにきてください(笑)。
――そのための場所ですからね! 浜辺さん、本日はありがとうございました!
ハッカーとは職業ではなく、1,000人に1人とも言われる高いスキルを持った凄腕エンジニアを称賛して呼ぶ肩書きのことでした。そんなハッカーたちに会えるハッカーズバー。ぜひ気軽に遊びに行ってみては。