通勤がイヤだ。だからといって、会社を辞めるわけにはいかない。
そこでなるべく通勤をしないよう、職場近くに引っ越しました。歩いて6分。生活が一変しました。始業ギリギリまで寝て、散歩に出るように手ぶらで出社。昼休みは自宅で食事。夜は終電を気にせずに飲み、歩いて帰宅。職場と住居が近いことのメリットと、職場近くに住むときのポイントをお伝えします。
ちなみに、職場と住居が近いことを「職住近接」といいます。「住職接近(じゅうしょくせっきん)」ではありません。
通勤 is つらい
引っ越す前は、オフィスが神奈川県川崎にあり、横浜の南の方から片道1時間半かけて通勤していました。東海道線の上りは本を開くことすらできない満員電車。ラッシュ時の駅構内はイラついている人が多く、舌打ちされたり、ぶつかってこられたり、心身ともに消耗していました。
ぶつかられるのは、なめられているからだと、なめられないようにトゲの付いた肩パッドを作るほどに追いつめられていました。
体力がないので、会社に着くとヘトヘト。エネルギーの大半は通勤に奪われ、仕事どころではありません。繁忙期は残業して0時に帰宅。1時半に布団に入り7時に起きていたので、つねに寝不足でした。イライラがたまり、21世紀にもなって、なぜ満員電車で職場へ通わないといけないのかと通勤を呪っていました。
ついに職住近接、コストは考え方を変える
ある日、川崎から東京都文京区本駒込にオフィスが移転することになりました。通勤に片道2時間半かかることになり、これはあかんと引っ越すことに。通勤を呪っていたので、会社まで徒歩6分のところへ怒りの転居です。職場からもっとも近い社員になりました。
しかし、そこは山手線の内側。家賃が高い。お金と時間の考え方をシフトする必要がありました。
もし通勤に1日5時間かけていたら、月に100時間(月20日勤務として)。会社の近くに住めば、これがほぼなくなります。通勤は労働ではないので残業代が出ません。しかし、仮に通勤を時給1,000円の労働としたら、100時間で10万円になります。会社の近くに住むことで、10万円分のタダ働きから解放されるなら、家賃が9万円だとしても「え!? 逆に1万円トクしてない!?」となりませんか。まあ、なにより通勤のストレスがなくなるのが大きいです。
そしてもう一点、昼食を家でとることの威力。日々のランチを600円とすると、月で1万2,000円。自分で米を炊き、野菜炒めなどを作れば1食100円、月に2,000円なので、約1万円の節約になります。弁当を作って持ってきている人もいますが、家で作って食べれば弁当箱につめる手間が省けます。
などなど、いろんな理由をつけて職住近接を実現しました。
ONとOFFは切り替えない
職場と家が近いとONとOFFの切り替えができないのでは、とよくいわれます。働いていて気づいたのですが、私の場合、つねにOFFになっています。スイッチがバカになっているというか、むしろONにしない方がいいのではないでしょうか。血圧が上がって健康に悪そうじゃないですか。
住居が近いと、会社に来ているというより、離れに顔出しする感覚になりますので、気楽さが違います。通勤で消耗しないぶん心身が軽いですし、リラックスして淡々と働く方が物事がスムーズに進むようで、生産性が上がりました。
とは言っても、ONにしてガリガリやらないといけない時期もあります。そのようなときは、思いきり力を入れることもできます。帰宅のエネルギーを確保しておかなくてもよいので、フルスロットルで力を限界まで出し切り、燃え尽きても数分後には家の布団に入ることができます。
また、遅くまで働いてもたくさん眠ることができます。片道1時間の人と同じ時刻まで働いた場合、その人より2時間多く睡眠時間をとることができます。
ワンエリアに集中することのリスク
職場≒住居となりますので、生活時間のほぼすべてが、小さなエリアで完結することになります。半径400mの円の中で1週間を過ごすことはよくあり、たまに服役しているような気分になります。これは強みであり、弱みでもあります。
職場≒住居のエリアが、仕事と生活の両面で自分に合っていないと不満を覚えるでしょう。職場周辺は繁華街、住むのは閑静な住宅地、といったハイブリッドなスタイルができません。
本駒込は閑静な住宅地で、川崎のようにヨドバシカメラもユニクロも映画館も大きな書店もありませんし、にぎやかではありません。これを物足りないという同僚もいますが、静かで落ち着いていて安らぎを感じるので私は満足しています。自分のライフスタイルとエリアが、どのくらいマッチしているかが職住近接をするうえでの大きなポイントとなるでしょう。
職住近接あるある
職住近接をしていると、こういうことがあるというのを実体験から紹介します。職住近接をしている友人も同じようなことを言っていたので、あるあるです。
・ローカルガイドみたいになる
ひとつのエリアに密着しているので街に詳しくなります。その結果、ローカルガイドのような頼られ方をします。おいしいお店、安い飲み屋、電車は何線を使えばよいかなどをよく聞かれます。
・同僚に助けを求められる
深夜に同僚から電話がありました。セキュリティーカードを持たずに喫煙所へ行ってしまい、居室から閉め出されてしまったとのこと。気の毒なので助けてあげました。「このご恩は一生忘れません」とリアルに言われました。
・職場でカレーを振るまう
カレーを大量に作って保温鍋に入れ、職場で同僚に食べさせました。1杯500円で売れました。
・服装がラフになりすぎる
駅など人の多いところに出ないので、外見を気にしなくなりがちです。近所のコンビニに行くような距離感なので、アイスを買いに来た客みたいな格好で出社してしまうことがあります。
・午前と午後で服装が変わっている
暑いとか寒いとか、服装を間違えて会社に来ても、昼に家で着替えることができます。夏は汗をかくので、着替える前にシャワーを浴びてリフレッシュしています。
・昼休みに本気で寝られる
昼休みに机に突っ伏して仮眠をとる人がいますが、家にかえれば横になってがっつり眠れます。寝過ごさないように注意が必要です。
まとめ
職住近接のメリットなどを紹介しました。様々な都合で、できない方もいると思いますが、できるならやってみてもよいのではないでしょうか。
私は30代中盤から職場近くに住みましたが、できればもっと早く、20代前半でやっていたら、仕事も遊びもより充実していたかもしれないと思いました。なので、若手の方にオススメしたいです。年齢が上がり、結婚して共働きだと両方の職場のことを考えないといけないとか(同じ職場ならよいですが)、子どもの保育園のことや、家族で住むには家賃が高すぎるなど、むずかしくなります。そう考えると、職住近接は独身の特権のようにも思えます。私はいいかげん独身じゃなくなりたいんですけど。
著者プロフィール: しーなねこ
珍妙な虚脱感を共有する団体「へもいっ子クラブ」の代表。「リアル桃鉄」「エクストリーム出社」など、視点を変えて生活をおもしろたのしくすることが目標。著書「サラリーマンは早朝旅行をしよう! 平日朝からとことん遊ぶ『エクストリーム出社』」(SB新書・共著) 。
ブログ: しーなねこのブログ
ツイッター: @shiinaneko