ダイハツ工業は軽商用車「ハイゼット トラック」を一部改良し、軽トラックで初めてとなる「衝突回避支援ブレーキ機能」(いわゆる自動ブレーキ)を搭載した。この機能の体験会では、ダイハツが軽トラックに自動ブレーキを付けた背景についても話を聞くことができた。

  • ダイハツ「ハイゼット トラック」

    ダイハツが軽商用車「ハイゼット トラック」を一部改良し、軽トラ初となる自動ブレーキを導入した

軽トラでトップシェアの秘訣は

「ハイゼット」はダイハツで最も歴史の長いクルマで、「ハイゼット キャディー」やバンの「ハイゼット カーゴ」など、いくつかのボディタイプがある。「ハイゼット トラック」は1960年に初代が登場し、これまでの累計販売台数は420万台を超えている。この8年は軽トラでトップシェアだ。

  • ダイハツの「ハイゼット トラック」と「ハイゼット カーゴ」

    多彩なカラーバリエーションも特徴の「ハイゼット トラック」(左)。価格は税込みで68万400円~139万8,600円からだ。右は「ハイゼット カーゴ」

「ハイゼット トラック」の強みは何か。ダイハツの鈴鹿信之チーフエンジニアは「頼れる、仕事がしやすい、安い」の三本柱に加え、キャビンを拡張した「ジャンボ」や天井を高くした「ハイルーフ」、特装車(例えば保冷車)などの豊富なバリエーションを挙げる。徹底的な市場リサーチに基づく車両開発にもこだわっているそうで、2014年のフルモデルチェンジで誕生した現行「ハイゼット トラック」では、開発に際して「全国各地、各業種」の顧客に話に聞いて、「さびに強い、しっかり走れる、収納が欲しい」(鈴鹿チーフエンジニア)などの要望を集めて商品に反映させたという。

  • ダイハツの「ハイゼット トラック」と鈴鹿チーフエンジニア

    鈴鹿チーフエンジニア

軽トラ市場で高まる安全性への要求

軽トラ初の自動ブレーキ搭載に踏み切った背景にも顧客の声がある。鈴鹿チーフエンジニアによれば、軽トラの近年の用途としては、買い物などの日常生活全般で使う人が増えているとのこと。ユーザーの年齢層としては60代以上の高齢者が増加しているそうだ。そういった状況から、乗用車同様に自動ブレーキが欲しいとの声が多くなっているという。

  • 軽トラックの市場動向

    軽トラの市場動向を見ると、主に乗用で使用する比率が高まっており、ユーザーの年齢層は60代以上が拡大しつつある。次に軽トラを購入する際には「安全面」を重視するという人も増えているそうだ。ちなみに「ハイゼット トラック」は、ステレオカメラを活用した「前方誤発進抑制制御機能」も搭載。オートマチック(AT)車でのペダル踏み間違えによる事故を防ぐ装備だ

そこでダイハツでは、今回の改良で「ハイゼット トラック」に衝突回避支援システム「スマートアシストⅢt」を採用し、軽トラ初でありダイハツのMT(マニュアル・トランスミッション)車としても初めてとなる衝突回避支援ブレーキ機能を搭載した。

自動ブレーキの仕組みとしては、フロントガラス中央上部に取り付ける世界最小サイズのステレオカメラで前方の車両および歩行者を認識し、衝突の危険性がある判断すると、まずはブザーで警報を出す。さらに危険性が高まると事前ブレーキが作動し、最終的には緊急ブレーキがかかる。

  • ダイハツ「ハイゼット トラック」

    自動ブレーキのデモの様子。ごく当たり前の話だとは思うが、数十回は繰り返したであろうデモでは百発百中で自動ブレーキが作動していた

日本の軽トラ市場は農家が減っていることもあり少しずつ縮小しているというが、それでも地方では足代わりとなっている側面もあり、一定規模の根強い需要がある。そんな軽トラ市場では、ユーザーの高齢化や女性ユーザーの増加といった流れもあるので、クルマ選びで安全性を重視する購入者は増えていくだろう。軽トラ初の自動ブレーキが、そういう消費者に響くのは間違いなさそうだ。