全ての人が加入しなければならない国民年金制度。しかし、保険料の未納率が高いことが昨今問題となっています。年金が未納となっている場合、一体どうなってしまうのでしょうか?

  • 国民年金保険料を払っていない人はどうなる?(画像はイメージ)

国民年金保険料、未納の実態

まず国民年金制度の加入者は、大きく3つに分けられます。

第1号被保険者
自営業の人、学生、フリーター、無職の人など。年金は自分で納める。

第2号被保険者
厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する人。保険料は厚生年金保険料として本人負担分と会社負担分が事業所より支払われる。

第3号被保険者
第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人。保険料は配偶者が加入する年金制度が負担する。

このうち、平成28年度分の国民年金第1号被保険者の納付率は65%。保険料の未納者が3割を超えるという数字が算出され、未納率の高さを窺うことができますが、この数字は"第1号被保険者のみ"の数字であるために注意が必要です。

第2号被保険者は、会社が個人の保険料負担分を天引きして、会社負担分と共に納付することとなり、第3号被保険者は、実際に保険料を納めていなくても国民年金納付済期間となるため、原則として未納はなく、未加入という問題も起こりません(ただし第3号被保険者の届出を怠っていた場合には、特例届などの手続きをしない限り、保険料納付済期間にならないので要注意)。

結果として、公的年金加入者全体でみると納付率は約97%となり、実は全体の約3%しか未納・未加入者はいないということが分かります(参照: 厚生労働省「知っておきたい年金のはなし」平成30年4月)。

国民年金保険料を未納・滞納するとどうなる?

年金の未納問題は主に第1号被保険者が対象となるケースが多いといえます。保険料が未納となっている場合、どうなるでしょうか?

まず当然ですが、その期間は保険料未納付期間や保険料免除期間には該当しないので、老齢基礎年金の計算には反映されません。

また、国民年金保険料の滞納期間が長期にわたる場合等には、障害年金や遺族年金がもらえない場合もありますので注意が必要です。

例: 障害基礎年金保険料納付要件
初診日の前日において次のいずれかの要件を満たしていることが必要
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち、2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
※ただし20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要

最終的には財産調査や差押えも

最終的には、国民年金保険料を支払う能力を持っていながら、度重なる督促にもかかわらず保険料を納付する意思がない人を対象に、日本年金機構より保険料が強制徴収されることになります。

日本年金機構は、一定の所得があり、保険料を長期間滞納している場合、保険料免除や納付猶予、学生納付特例に該当する人を除いた全員を強制徴収の対象者と位置づけています。そして特に2018年度においては、控除後所得300万円以上かつ未納月数7カ月以上の滞納者に督促を実施するとしています(参照: 日本年金機構平成30年度計画)。

(1)特別催告状の送付

保険料を滞納していること及び免除制度を知らせ、警告等を明記。

(2)最終催告状の送付

強制徴収の対象者に対し、納付書とともに送付される。滞納処分等を明記。

(3)処分

督促をしても指定期限までに納付しない場合は、国税滞納処分の例により処分される。具体的には、預貯金・売掛金・給与・生命保険解約返戻金・自家用車といった財産の差押え、公売等が実施される(参照: 国民年金部「国民年金保険料収納対策の状況」)。

個人的な見解としては、財産の差押えまでされている人はまだ少ないという印象ですが、今後はより厳しくなることが予想されますので注意しましょう。

保険料が支払えない場合には

もし生活が苦しくて保険料の納付が困難な場合には、分割納付や免除・猶予制度等を利用するという方法もあります。

例えば、障害年金1級・2級に該当する方は法定免除されますし、所得が少ない人は全額免除・半額免除・4分の1免除、4分の3免除、学生は納付特例といった制度が使えます。一度お近くの役場や年金事務所でご相談されてはいかがでしょうか?

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所