2018年採用のキーワードは「多様性」

マックが「大歓迎!!」キャンペーンを展開する1つ目の狙いが積極的増員だとすれば、2つ目の狙いは何か。それは「多様性」を打ち出すことだ。

下平副社長は「マクドナルドのビジネスはピープルビジネス。働く環境を整備し、クルーの採用と育成、満足度を大切にする。昨年12月に実施したクルー満足度調査では、84%のクルーが満足しているという結果だった。クルーが充実していることが、お客様へのサービス向上につながり、ご満足いただける店舗を生む。よいサイクルの継続を目指していく」とする。クルーの満足度に直結する要因として、多様性を重視する姿勢は不可欠なのだ。

  • マックのクルー姿の春名風花さん

    マックのクルー満足度は84%。友人による紹介採用は60%、新卒社員のクルー経験比率は75%との数字も紹介された

マクドナルドのクルーには、学生、若者、主婦、シニア、外国人が含まれる。クルーのライフスタイルはさまざまだ。今回、採用キャンペーンに向けて発表された新しいCMにも、多様な職種経歴を持つ現役クルー7名が登場する。

マクドナルドは人材採用・教育にあたり、多様性を重視する方針を打ち出す。特に教育面においては、クルートレーニングプログラム、そして働きながら学べる場所として開校46年を迎える「ハンバーガー大学」の存在を強調する。クルートレーニングプログラムは、外国語にこそ対応していないものの、ロールプレイングや画像を多用し、シニアや外国人でも分かりやすいツールとして活用している。

  • マクドナルドのクルートレーニングツールを説明したスライド

    トレーニングツールでは動画も活用。さらに進化したシステムも開発中とのことだ

多様性の確保にマクドナルドならではの強み

マクドナルドの持つ強みは、採用やトレーニングだけではない。最大の強みは求人面における多様性だ。学生が多い町、ショッピングセンター、駅前など多くの店舗を持ち、異なる営業時間で運営しているマクドナルドでは、働き手が自分の希望に合わせて選べる店舗の選択肢が豊富だ。働く側の希望と店舗側のニーズを完全にマッチさせることは難しいが、マクドナルドは多様な店舗で間口を広くとり、このマッチングの精度や確率を上げているのではないだろうか。

いくつかの店舗のアルバイトを検索をしてみると、店舗の営業時間や特徴に加え、勤務時間・募集対象が記載されていた。店舗ごとにニーズはさまざまだ。働き方について多用なニーズを持つマクドナルドだからこそ、クルーの多様性を受け止め、尊重することが可能なのだろう。

  • ライフスタイルの多様化を示すスライド

    ライフスタイルが多様化すると、働き手の要望も細分化する道理だ

人出不足の代表業種としてよく名の上がる「外食産業」。人手不足を解消するため、多くの企業が賃金を上げるなどの取り組みを重ねているが、解消されたという事例はあまり耳にしない。

賃金上昇とコスト上昇は価格への転嫁につながり、値上げは客離れに直結して業績の悪化を招く。これは企業だけでなく、消費者も幸せにならない図式だ。クルーによし、顧客によし、そして企業によし。近江商人の「三方よし」ではないが、商いの基本にのっとった取り組みが、マクドナルドの業績回復につながっているという印象を受けた。