市営地下鉄と市バスを運営してきた大阪市交通局は、多額の負債を抱えていることから、2006年頃より民営化の検討に入っていた。そして2018年4月1日、地下鉄は「大阪市高速電気軌道株式会社(愛称:Osaka Metro)」へ、市バスは同社の子会社「大阪シティバス」へ、それぞれ全路線が引き継がれる。

地下鉄は一時、線路などの設備保有と、営業や列車の運行を別組織が担う「上下分離」が検討されたこともあった。だが、最終的には設備保有も営業もOsaka Metroが一括して行うこととなった。

  • 左:大阪市営地下鉄を代表する御堂筋線の電車。右:現在、地下鉄の駅や車内には新会社移行をPRするポスターが随所に貼られている

「Osaka Metro」との愛称は公式には英文である。日本語で「大阪メトロ」と表記することは、厳密には正しくない。

公営地下鉄の全面移管は全国初

大都市圏の地下鉄の経営が別組織へ移された例としては、2004年に帝都高速度交通営団(営団地下鉄)を引き継いだ東京地下鉄(東京メトロ)がある。ただし、営団地下鉄は国鉄(JR発足後は政府)と東京都が株主であり、その出資は、東京メトロへそのまま移された。上場計画はあるが、現時点では完全な公的資本による会社である。

公営地下鉄が株式会社化される例は、Osaka Metroが初。しかしながら新会社は大阪市が100%出資する株式会社であり、経営決定権は大阪市と大阪市議会が持つ。現時点では民営化というより株式会社化と呼ぶ方が、イメージは近いかもしれない。

民営化に対応するため、市内の交通に関する基本政策の企画立案・推進、総合調整を目的として、大阪市は市長直轄の「都市交通局」を2017年7月に設置した。この部局がOsaka Metroと大阪シティバスの監理も行うことになっている。