クルマの電動化はスポーツカーの世界にも及ぼうとしているが、ポルシェも例外ではない。それどころか、同社は巨額の投資を行い、電化を急いでいる側面もある。そこで気になるのは、“電動ポルシェ”がポルシェらしいのかどうかだ。その辺りを含め、ポルシェの電動化についてポルシェ ジャパンの七五三木(しめぎ)敏幸社長に話を聞いた。
スポーツカーに電化の波、ポルシェ「ミッションE」の衝撃
スポーツカーの世界では、すでにハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)で市販されている車種もある。例えばポルシェは、2010年にSUVの「カイエン S ハイブリッド」を、また同様のシステムで2011年には「パナメーラ S ハイブリッド」を発売している。BMWは電動車の新しいブランドである「i」を立ち上げ、2013年にPHVスポーツカーの「i8」を発売した。
イタリアのフェラーリは、「ラ フェラーリ」(LaFerrari)というHVを世界限定499台で2013年に発売。このクルマには、F1のレースカーで当時採用していたエネルギー回生システムを応用した機構を用いているといわれる。
中でも、スポーツカーメーカーであるポルシェが、クーペボディの4ドア電気自動車(EV)「ミッションE」(Mission E)を2015年に発表し、2019年にも発売を開始する予定であると宣言したのは、かなり衝撃的な出来事だったといえるだろう。
電動ポルシェに乗ってみた感想は?
その試作車に同乗したという、ポルシェ ジャパンの七五三木社長は、「まぎれもなくポルシェだった」(以下、発言は七五三木社長)と感動的に語る。では、「まぎれもないポルシェ」とは、どういう意味なのだろうか。
「コンピュータで操縦特性を変えられたり、エンジン車以上に駆動輪の制御が緻密な感じがしたりしましたが、ポルシェの開発者たちは、(電動化は)自動運転のようにクルマが走りを制御するのではなく、あくまで運転者を助けるための技術だと言います。運転者はハンドルから手を離すことなく、走る、曲がる、止まるの動きを、EVでもエンジン車と同じように感じられなければならないと考え、開発しているようです。制御装置の凄さではなく、人馬一体感が根幹となるスポーツカーでなければならないとの定義が、ポルシェAG(ドイツ本社)の中にはあります」
「EV化をしても、これまでと全く変わらないのが理想でしょう。ミッションEが目指すのは、加減速を何度繰り返しても、バッテリーの充電残量が減ることによる性能低下を覚えさせないこととのリリースも発表しています」
2017年7月、フランス政府と英国政府は相次いで、2040年にはエンジン車の販売を禁止するとの声明を出した。それ以降、自動車業界は電動化へと大きく舵を切り始めた。だが、ポルシェも同じように慌てて電動化へ移行したのではなく、あくまで電動化してもポルシェはポルシェという、スポーツカーの乗り味を実現できるから取り組むのだと、七五三木社長は力強く答えた。