マクニール氏がTwitterで声を上げた際、『笑ってはいけない』の画面写真とともに、実は『よゐこの無人島0円生活』(テレビ朝日)の会見で、よゐこの濱口優が顔を黒塗りにした写真も挙げられている(上記)。これは、濱口の対戦相手となる、部族の染料を顔に塗ってナス色になってしまった通称・ナスDを意識したものだが、こちらは炎上騒ぎにならなかった。

この要因は、『笑ってはいけない』が、『紅白歌合戦』の裏で高視聴率をたたき出す国民的番組という位置にあることが大きい。それだけに、「日本のお笑い界の叡智が結集して何カ月も前から綿密な計算で笑いの仕掛けを準備してきた番組なのに、なぜああいう表現になってしまったのかと、批判というより残念という感情があったのではないでしょうか」(竹下氏)という。

それに加え、番組の公式Twitterが、当該シーンを切り取ってアピールしたために、「番組タイトルが『笑ってはいけない』ということもあって、あれを見た人が、黒い肌を笑ったものと受け止める人もいたんだと思います」と分析。「私もAbemaTVなどメディアに出て発言が切り取られてそこだけツイートされることもありますし、ハフポストの記事も一部の文言だけツイートされて本文は読まれないことも多いですから、良くも悪くもコンテクスト(文脈)から離れて内容が伝わってしまうということを、自分としても反省しなきゃいけない面だなと思いました」と、はからずも自らの教訓になったそうだ。

ダウンタウンの騒動イジリトークは評価

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日本テレビは、この騒動が起こった後、1月6日に未公開シーンを含めた『完全版SP』を放送したが、ここでも"黒塗り"のシーンを再び流して話題となった。それについて、竹下氏は「今の時代、いろんな企業さんのPR動画も炎上していますが、そんな時にどうリアクションするのかというのが、むしろ大事な時代です。だから、『完全版はカットするのが間に合わなかったから流すけど、今後に生かしていきます』といったコミュニケーションを番組などを通してできれば良かったのではないでしょうか」と見解を語る。

それだけに、2月4日の放送で、ダウンタウンがこの騒動をネタにしたフリートークを展開したことについては「全く黙殺するんじゃなくて、きちんとネタで扱っているのは、私たちみたいな批判的なメディアとコミニケーションしてるんだなと思いました。だからすごくうれしかったですし、良かったなと思いました」と評価。

このトークの中で、松本人志は「『浜田の黒塗りだ』って(批判する記事の)写真を、浜田の黒塗り使ってるからね。どないやねん! アカンと思うならその写真もアカンやろ!」とツッコんでいたが、竹下氏は「確かにそれは1本取られたなと思いました(笑)。でもメディアとしては、批評のための引用をしないといけないので…まぁ難しいですね(笑)」と苦笑いしていた。

一方で、松本は『ワイドナショー』(フジテレビ)で、バラエティでの黒塗りについて「はっきりルールブックを設けてほしい」と主張している。これに対して、竹下氏は「今回は、エディ・マーフィだったとか、そこだけ切り取ったツイートが流れたとか、いろんな要素があったので、騒動になるのはケースバイケースだと思います。従って、制作者にとっては大変な時代ですが、毎回いろんなことを考えながら表現して、もし何か起きたらきちんと応えるという方法が良いのではないかと思います。『この表現は良くて、あの表現はダメ』というルールブックを事前に作ってしまうと、表現が硬直化するため、ちょっと違うと思います」との考えを示した。