運輸安全委員会は2月22日、2017年1月19日にANAウイングスが運航したANA1831便(秋田発/新千歳着、ボンバルディア式DHC-8-402、JA461A)が、新千歳空港に着陸後、11時58分頃、オーバーランして積雪のある草地で停止した重大インシデントに関して、最終報告書を公表した。
今回の重大インシデントは、機長による制動の開始が遅れたこと及び同機のパワーレバー(PL)がディスク位置にセットされず減速に必要な制動力を得られなかったことのため、同機が滑走路をオーバーランしたものと推定される。また、滑走路終端付近及び過走帯の積雪等の状態が悪かったことも、同機のオーバーランに関与したものと考えられる。
機長による制動の開始が遅れたことについては、滑走路終端の誘導路B2から離脱する管制指示を受けた機長が、同機の制動を遅らせることにより滑走路を短時間で離脱しようとしたことによるものと推定される。また、機長が、制動を開始した誘導路B3を誘導路B4と思い違いしたことが関与したものと考えられる。
同機のPLがディスク位置にセットされなかったことについては、機長がPLはすでにディスク位置にあるものと思い違いしたことによるものと考えられる。また、副操縦士が通常とは異なる位置にあるPLに気付かなかったことが関与した可能性が考えられる。
今回の事故後にANAは再発防止策として、全運航乗務員に対し事例紹介及び同様事象の再発防止のための注意喚起を実施。また、設置後直ちにPLディスク位置にすることなどを飛行機運用規程(AOM)に加えたほか、全運航乗務員に対し「冬期運航に向けて(2017~2018):オーバーランを防止する」と題した社内誌を発出し、2017年度の冬期運航訓練を開始した。
さらに、リバースピッチ操作を経験させる訓練を導入するように、同機の同型式機の機長任用/昇格及び副操縦士任用のシミュレーター訓練、並びにシミュレーター定期訓練の実施要領を改定し、これらの実施要領に基づく訓練を開始した。