有楽町線「江戸川橋」(東京都文京区)。ここは、どちらかと言うと「マイナーな駅」という印象があるかもしれない。事実、下車してみてもどうということのない駅である。しかし、その何の変哲もない様相に惑わされてはいけない。江戸川橋は、ほんの少し奥へ入れば一日ボーッと過ごしてしまいそうなスポットがところどころに現れる、東京らしからぬ街なのだ。
なかなかやる! 江戸川橋
数百年前の江戸川橋一帯は、椿の花が咲き乱れ、彼方には富士山までも見渡せる景勝地だったと言われている。当時の人たちも、きっとここで一日ボーッとしていたに違いない。実際に歩いてみると、そのノホホンとした雰囲気が今も残されているような気がしてくる。
ここは、江戸時代には大名の下屋敷街として栄えていた。そして明治・大正時代に活躍した人物たちは、この地に自らの邸宅を建てた。広大な庭園まで付いた豪邸である。時が経った今、それらのいくつかは誰でも訪れることのできるスポットとして公開されている。「肥後細川庭園」「永青文庫」「鳩山会館」「ホテル椿山荘東京の庭園」などがそれである。
さらにその付近には、斬新な教会や記念館もある。大正時代から続く商店街や、老舗のフランスパン店などのグルメ巡りも楽しみのひとつだ。こうして見ると、「江戸川橋、なかなかやるな」と言わざるをえない。
何はともあれグルメから
江戸川橋の老舗商店街「地蔵通り商店街」は、東京メトロ有楽町線江戸川橋駅2番出口から、徒歩2分のところにある。入り口には子育地蔵尊があり、商店街は地蔵に見守られるようにして300mほど続いている。派手さは全くなく静かだが、寂れているわけでもなく穏やかで、なるほど、大正時代から地元の人に大切にされてきたのだろうという気がした。
薄皮の香ばしたい焼き&ミニたい焼き!?
たい焼きは意外と奥が深い。シンプルな中にもそれぞれにこだわりがある。地蔵通り商店街に、行列のできるたい焼き屋「浪花家」を発見した。浪花家の「たい焼き」(160円)は、1匹ずつ焼く一丁焼きで、サクッとした薄皮がポイント。ほんのり焦げた皮は香ばしい。さらに「ミニたい焼き」(400円/8個)などというものもある。いわゆる人形焼きなのだが、あまりのかわいさに買わずにはいられない。
揚げ物でサックリ
街の台所よろしく、「旬菜おかずや」というストレートなネーミングのお店を訪ねた。焼き魚やなすの煮浸しなど、食卓を彩る定番おかずが並んでいる。その中でも食べ歩きしてみたいのは「はんぺんチーズ」(215円)。大きなはんぺんにチーズを挟んだフライだ。
「花より団子」なあなたに
春になると食べたくなるのが団子。「浅田家和菓子店」の「みたらし団子」(150円)は、一粒ずつが少し横長の4連団子だ。店主に愛想がないのが玉に傷だが、団子の焦げ具合と甘辛いタレは程よくマッチしている。
絶品! 日本初の本格フランスパン
地蔵通り商店街を抜け、神田川沿いを行くとパン屋がある。創業明治21(1888)年のパン店「関口フランスパン」だ。日本で初めて本格的なフランスパンを製造したという老舗である。それゆえに多種多様なフランスパンが棚に並んでいて、見ているだけでも面白い。
その他、自家製カスタードクリームのデニッシュやクロワッサンなども販売している。最近のオシャレパン屋は高額なのが常だが、ここはリーズナブルなのがうれしいところ。カフェスペースでカフェオレを飲みながら、フランスチックなひとときを楽しんでみてもいいだろう。
●information
関口フランスパン本店
東京都文京区関口2-3-3
続いては、たくさんのグルメを抱えつつ、お散歩スポットを巡るわけだが、注意しておきたい点がひとつ。「この付近の夜はえらく早い」ということだ。公開されている庭園や施設の中には、16時頃に閉館となってしまうところもある。うかうかすると、「残念ですが、また今度」ということになりかねないため気を付けよう。
「ここはどこ?」と、思わず東京にいることを忘れてしまいそうになるのが「肥後細川庭園」だ。続いてはそんな肥後細川庭園とともに、憧れの結婚式場としても人気のあの歴史あるホテルなどを紹介しよう。