緻密に描かれるメカニック - ただしツッコミどころも

「プラレール」ともタイアップする「シンカリオン」だけど、アニメ版で登場する新幹線車両はデフォルメなし。「シンカリオン」を展開する「プロジェクトシンカリオン」はジェイアール東日本企画と小学館集英社プロダクション、タカラトミーが立ち上げ、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州、ジェイアール東海エージェンシー、ジェイアール西日本商事が協力している。実物の車両や施設をちゃんと出してくれる。

CGで作られた新幹線車両は実感があり、走行シーンはシューンとスピード感があってかっこいい。同じ地下トンネルのシーンが何度も出てくるけれども、これが敵の出現やシンカリオンの出動の合図となるカットだろう。次の場面への期待が高まる。

細かいところも凝っている。たとえば架線は、ちょっとデフォルメがあるけれど実物通りのヘビーコンパウンドカテナリ式になっていた。走行音はどうか。筆者は音については詳しくないけれど、ロングレールは再現されているようで、「ガタンゴトン」というわかりやすい電車の音にはなっていない。環境効果音に紛れていたけれど、車内放送と駅のアナウンスも本物の雰囲気。ちなみに鉄道ファンで知られる中川家礼二さんが車掌の声を担当しており、中川家剛さんも駅員を演じている。第1話で、車掌役の礼二さんはちゃっかり「車掌は中川家礼二でした」とアピールしていた。

  • 実在する鉄道関係の設備を生かした設定がある一方、鉄道ファンがツッコミを入れたくなってしまうアニメならではの小ネタも

それにしても、シンカリオンの出発合図が腕木式信号機ってどういうことなんだろう。たしかにかっこいいんだけど、新幹線でこの信号機は……。きっと鉄道会社で予算を配分する偉い人に対して、わかりやすいアナログのしかけが必要だったのかなと脳内補完してみる。必殺技を出すため、なぜか敵を自動改札機で束縛する。こんな荒唐無稽なしかけも、「たしかに駅でアレをやられたら立ち止まっちゃうよな」と納得してしまう。

駅や風景も実在の場所だった。これまでに怪物が出現したエリアは「東北本線片岡駅付近」「福島県郡山市南方」「宮城県名取市」など実在の地名を使っているし、「仙台の新幹線車両センターで待機」「新幹線総合車両所に送電要請」といった施設名も出てくる。子ども向けなら適当な名前で済ませても良さそうなところ、ちゃんと本物の鉄道に寄せている。鉄道ファンも納得だ。架空の名称を考えるより楽かもしれないけどね。

ツッコミどころとしては、第4話で「シンカリオン E6こまち」が超進化速度に入ったとき、9両編成以上の長さで描かれていた。実物は7両編成だけど、理由があるのだろうか。ちなみに「プラレール」のシンカリオンは3両編成で、先頭車2両が合体し、中間車に武器が格納されている。アニメでは、あれだけの中間車を何に使っているか気になる。

実際の新幹線車両は軽量化のためアルミ合金製だから、あんな戦闘には耐えられないだろう。肩の部分の窓ガラスだって割れる。ひょっとしたら、シンカリオンは非常に重厚な合金製で、その重い車体を高速に走らせるため、中間車をすべて機関車級の馬力のブースターにしているかもしれない。いやぁもう、妄想がはかどるなあ。