まもなく節分。お店には大豆が多く並んでおり、もうすでに購入したという人もいるかもしれません。節分を機に、大豆デビューをする子もいると思いますが、小さな子どもにとっては喉に詰まらせる危険性があり、注意が必要な食べ物です。
今回は、節分の豆を何歳から食べさせてもいいのかや、事故の防止法、それに事故が起きてしまったときの対処法について、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
3歳未満の子には与えないで
Q.節分の豆は子どもに食べさせてもいいのでしょうか?
節分の豆は、小さな子どもたちにとってはできるだけ避けた方がいい食べ物です。その理由としては、アレルギーを発症する可能性があること、喉に詰まらせやすいこと、そして硬く小さいため十分に咀嚼できないことが挙げられます。
Q.豆自体は小さいですし、喉に詰まるというのは考えにくい気もするのですが……
確かに、豆類については詰まりにくいと考える人が非常に多いのですが、実際は喉に詰まらせる子どもがたくさんいます。滑りやすい形状のため、口に入れているときに誤って気管支の方に吸い込んでしまうこともあります。
詰まらせてしまった場合、豆が見えていれば手を突っ込んで取り除けますが、それができないと麻酔を使い、専用の器具で取り除かなければなりません。喉や気管を完全にふさいだ状態が続くと、命に危険が及んだり、脳がダメージを受けたりする可能性もあります。 まずは、お父さんやお母さんたちが事故の危険性を意識してもらいたいと思います。
Q.それでは、何歳以上なら節分の豆を食べさせてもいいのでしょうか?
体に免疫がついてきて、大豆アレルギーがないと分かっている場合、3歳以上であれば注意しながら食べさせてもいいでしょう。ちゃんと咀嚼しているか、静かに座って食べているかどうか、親の目の届く範囲であげることが重要です。
Q.大豆アレルギーが心配な場合、どんなことに注意したらいいですか?
硬い節分の豆ではなく、軟らかい水煮の大豆や納豆などを選んで、いきなり多量を与えることは避け、まずは少量与えましょう。アナフィラキシーなどの症状が出ないかどうか様子を見て、15分間何もなければ、アレルギーの心配は少ないと言えます。慎重に様子を見ることが大切です。
喉に詰まったときの症状と処置方法は?
Q.節分の豆を与えたとき、気をつけたい子どもの症状はありますか?
子どもがせき込んでいたり、唇の色が青紫色になっていたりすると、喉に物が詰まっている可能性があります。声が出せない、意識がないといったケースもあり、これらの場合はかなり緊急性が高いと言えます。
Q.喉に詰まってしまったらどのように対処すればいいですか?
物が詰まって声が出せない場合、緊急性が高く迅速な処置が求められるので、とにかくまずは救急車を呼びましょう。せき込んでいる場合は、反射で異物が出てきたり手で取り除けたりすることもあるので、試してみてください。
しかし絶対に無理はせず、取り除けなさそうならすぐに病院に駆け込むことが大切です。子どもの場合は特に、酸素が足りなくなると一気に具合が悪くなってしまいます。一刻を争う状態なので、迷う必要はありません。
救急車を呼んだあとの処置方法は、日本小児呼吸器学会が発表している「小児の気道異物事故予防ならびに対応」が参考になります。ホームページにも掲載されているので、ぜひ見てみてください。
Q.喉に詰まらせやすい食べ物には、大豆に限らず注意が必要ですね
これまで、こんにゃくゼリーやお餅を詰まらせた患者さんも診たことがあります。このような食べ物は、一気に吸い込んでしまうと本当に危険なので、できるだけ小さくして与えるようにしましょう。また、遊びながら食べたり、寝転がって食べたりすると詰まりやすくなるので、親子で注意してください。
事前に知識を得ていれば防ぐことのできた事故によって、重い脳障害を抱えることになった子どもを何人も診てきました。楽しい節分の日ですが、こうした事故の危険性もぜひ忘れないでもらえたらと思います。
竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。