早いもので、2017年も残すところあと数日。「嘘だろ!? この前まで夏だったじゃん!」なんて思いつつ、扇風機すらまだ片づけていないそこのキミ! そんなことだからいつまでもTシャツ姿で風邪を引いちゃうんだぞ(俺)。ということで、「今年の汚れは今年のうちに」じゃないけれど、お坊さんが店員を務めていることで人気の「坊主バー」(東京都新宿区)で今年1年の煩悩を振り払ってきた。

  • 数々の粋なバーがひしめき合う四谷の路地裏の2階にあり

    数々の粋なバーがひしめき合う四谷の路地裏の2階にあり

お坊さんと話す機会ってあんまりないよね

坊主バーがあるのは、東京メトロ丸の内線「四谷三丁目駅」4番出口を出て、新宿通りを四谷方面へ少し歩き、路地に入った建物の2階。この日のために、ではなくもともとスキンヘッズな筆者だが、なんとなく出家するような神妙な気持ちで店への階段を上がってみた。

  • カウンターでお坊さんと話しながら飲むのが楽しそう

    カウンターでお坊さんと話しながら飲むのが楽しそう

入り口で「いらっしゃいませ」と出迎えてくれたのは、店主の藤岡善信さん。すっごく物腰の柔らかいお坊さんだ。頂戴した名刺には「浄土真宗本願寺派」と書いてある。う~ん、仏教に詳しくもない筆者だが、そんな人でも来ちゃってよかったのかな? そもそもどうしてお坊さんがバーをやってるんでしょう? 藤岡さんに聞いてみると、

  • 店長の藤岡善信さん。物腰柔らかながら結構ユーモアもありなお坊さん!人気ありそうだ

    店長の藤岡善信さん。物腰柔らかながら結構ユーモアもありなお坊さん!人気ありそうだ。

「このお店は2000年8月に開店したんですけど、坊主バーはもともとは大阪の住職が発案したものなんです。お寺でやっていた「お話の会」にバーテンの子が来ていて、その会がすごく面白かったそうで、だったら仏教が話せて、敷居が低くてみんなが集まれるコミュニティの場所を作ろうということから、1992年に大阪で初めて「坊主バー」が立ち上がったんです」とのこと。

さらに、「葬式、法事でしかお坊さんと話す機会がないですし、敷居が低くてどなたでも心を通わせることができる場所を作りたいという願いのもとにやっております」と語る藤岡さん。

  • アルコールの種類も豊富

    アルコールの種類も豊富

そのお話に、入店してわずか2分足らずで、心が洗われた気分になってきた。最近はテレビのバラエティ番組にもお坊さんが出演していたりするが、理由が分かった気がする! ちなみに藤岡さんもテレビには度々出演されているようだ。

  • お通しはお線香をイメージしたという、素麺を胡麻油で揚げたスナック。止まらないおいしさ。

    お通しはお線香をイメージしたという、素麺を胡麻油で揚げたスナック。止まらないおいしさ。

24歳で出家した藤岡さんは、もともとご実家が料理屋さんで、さらにバーでバイトをしていた経験もあるそう。なるほど、それならきっと洒落たカクテルなんかも得意に違いない。早速注文させてもらおうっと。すいませ~ん、メニューありますか?

「あ、横に置いてあるのがメニューです」

  • こちらの経本的な冊子がメニュー

    こちらの経本的な冊子がメニュー

言われてよく見たら、カウンターの上に経本が。えっ!? これメニューなの? 中をパラパラとめくってみると、確かにメニューになっているではないか。面白いことをやるなあ。

メニューの冒頭には「参拝料(チャージ)」「参拝時間(営業時間)」、料金も「五百縁(500円)」など、表記でも世界観を徹底しているのがすごい。なんだかとてつもなくユーモアのある店にきてしまったようだ。では、フード(精進料理)とドリンクのオススメを一品ずつオーダーしてみた。

  • 「無限地獄」「愛欲地獄」「灼熱地獄」の地獄三連星が気になりすぎる

    「無限地獄」「愛欲地獄」「灼熱地獄」の地獄三連星が気になりすぎる

「極楽浄土」のカクテル、漂う線香の香り

まず出てきたのが、1番人気のカクテル「極楽浄土」(税込800円)。フランスのリキュール「ヒプノティック」と「マンゴージュース」「クランベリージュース」で作られたカクテルだ。極楽浄土に咲くという蓮の花の色、青、黄、赤、を表した3層になっていて綺麗!

飲んでみると、ちょっと懐かしいような甘酸っぱい味がして、見た目の美しさを裏切らないおいしさ。おっと、かき混ぜるときにマドラーを見てみると、なんとなく卒塔婆にも見えてしまうから不思議だ。

  • 1番人気のカクテル「極楽浄土」(税込800円)は、美しいビジュアル

    1番人気のカクテル「極楽浄土」(税込800円)は美しいビジュアル

  • コースターにはカワイイお地蔵さんが

    コースターにはカワイイお地蔵さんが

  • 無意識に卒塔婆っぽくなったらしい木製のマドラー

    無意識に卒塔婆っぽくなったらしい木製のマドラー

そして、フードの方は「生麩の胡麻油炒め」(税込700円)をチョイス。よもぎが入った麩が外はカリッと、中はもちもちっとした食感で想像以上に食べごたえあり。海苔と醤油の味付けのせいか、磯辺焼きみたいにも感じる。これは正月に餅を食べる代わりにいいかも? 酒とも合うし、おつまみとしても新鮮だ。

  • 結構食べごたえがあるから、精進料理といえども物足りなさはなし!

    結構食べごたえがあるから、精進料理といえども物足りなさはなし!

  • 箸袋のデザインにもこの工夫!

    箸袋のデザインにもこの工夫!

開店時間になると次々とお客さんがやってきて、カウンターはほぼ満席に。そこで、2番人気のカクテル「無限地獄」(税込800円)を注文したお客さんに味の感想を尋ねてみると、「ポップです」のひと言。なんだかお客さんも面白いぞ!

中には地方から休みを利用してやってきたという女性のお客さんも。お店の魅力を尋ねてみると、「最初に来たときから初めてきた気がしなかったんですよね。お線香の香りとかがして、癒やされます」とのことだ。

  • 生麩ってこんなにモチモチしておいしいんだ!?

    生麩ってこんなにモチモチしておいしいんだ!?

  • 「無限地獄」(税込800円)は、名前と見た目はダークながら味はポップ!?

    「無限地獄」(税込800円)は、名前と見た目はダークながら味はポップ!?

坊主バーというだけあって、この店ならではのイベントもあり。営業中に説法の時間が1回から2回あり、プリントを配ってお客さんも一緒にお経を読み上げるんだとか。そして藤岡さんからお話を少々。さらに、おみくじや御朱印も販売しているから、ちょっとした参拝にきた気分になれそう。

よく見たら、店の奥にはお仏壇もあるじゃないか。毎日開店時間前には、仏壇に向かいお経を上げているそうだ。はは~、なんとなくありがたい気分が高まってきた。

  • 開店前にお経を上げるのが日課

    開店前にお経を上げるのが日課

  • 奥にデーンと鎮座する仏壇

    奥にデーンと鎮座する仏壇

従業員のお坊さんは、日替わりで6人程度が働いている。昼間は寺の仕事をこなしており、藤岡さんはとある寺の副住職でもある。ちなみに、なんとスタッフで組んでいる「坊主バンド」として音楽活動もしており、藤岡さんはリーダー、ボーカル&ギターを担当しているとのこと。

ライヴも都内ライヴハウスで行っており、200人キャパの「渋谷O-nest」をソールドアウトさせたというから本格的だ。「まあ、簡単に言うと仏教をネタにしたコミックバンドなんですけど。やりすぎて批判されたこともあります(苦笑)」という。藤岡さん、実は結構パンクなお坊さんなのでは!? ますます興味が湧いてきた!

  • 坊主バンド主催イベントも開催。「"南無ロックフェス"はフジロックにかけて名付けました」と藤岡さん。いや、そんなかかってねえし!

    坊主バンド主催イベントも開催。「"南無ロックフェス"はフジロックにかけて名付けました」と藤岡さん。いや、そんなかかってねえし!

お坊さんたちが醸し出す穏やかな空気が流れていると共に、ユーモアたっぷりでリラックスできる楽しい雰囲気もあり。取材が終わっても、ほかのお客さんとおしゃべりしながらまったり落ち着いてしまったくらいだ。年が明けたらまた来よう。みなさんも、精進料理をつまみ、カクテルを飲みながら1年を振り返ってみてはいかがだろうか? きっと心が安らぐはず!

  • Xmas限定の御朱印も販売(12月25日まで)。よく見るとXmasリースに寺の鐘という和洋折衷デザイン。マジでイカす! 正月バージョンも出るそうなので要チェックだ

    Xmas限定の御朱印も販売(12月25日まで)。よく見るとXmasリースに寺の鐘という和洋折衷デザイン。マジでイカす! 正月バージョンも出るそうなので要チェックだ

●information
坊主バー
住所: 東京都新宿区荒木町6-42 AGビル2階
営業時間: 19時~25時
定休日: 日曜・祝日