選択肢は豊富な3列SUV、CX-8の独自性は?

言わずもがなかもしれないが、3列SUVを商品化したのはマツダが初めてではない。日本車にはトヨタ「ランドクルーザー」、日産自動車「エクストレイル」、三菱自動車「アウトランダー」といったクルマがあるし、最近ではレクサス「RX」からも3列シートが登場している。輸入車にもBMW「X5」、ボルボ「XC90」、アウディ「Q7」といった幅広い選択肢がある。

  • 日産エクストレイルの画像

    トヨタ「ランドクルーザー」や日産「エクストレイル」(画像)など、選択肢は豊富な3列SUV市場

ではなぜ、マツダはCX-8で「新しい市場を創造」すると言うのだろうか。既存の3列SUVとCX-8の違いについて、高場氏が真っ先に挙げたのは3列目の居住性だ。もともとは中型車のエクストレイルやアウトランダーにとって、3列目は緊急用といった感じの意味合いがあるというのが高場氏の分析。急遽7人で乗る必要が出た場合に使うシートという意味だ。

一方、CX-8は大人7人が普通に乗れることを強みとして打ち出している。実際に3列目に乗ってみたところ、身長174センチの筆者であれば膝と2列目の間にこぶし1~2個分の隙間が確保できる。頭上はさすがにギリギリといった感じだったが、3列目でもリクライニングシートのように体勢を斜めにして座れるので、そこまで窮屈な感じもしなかった。3列シートのクルマであるため全長は長いが、横幅が「CX-5」と同等であるCX-8は、日本の道路でも許容範囲の寸法なのに、3列目が“おまけ”ではないという部分を独自性として訴求する。

  • CX-8の画像4

    3列目に乗り込むには、画像のように2列目を倒し、前方にスライドさせる

悪路走破性に特色のあるランドクルーザーと比べると、オンロードでの走行を主に考えて作られたクロスオーバーSUVであるCX-8は商品性が異なる。輸入車は日本で乗るには寸法が大き過ぎたり、価格が高かったりもするので、CX-8と正面から競合するシーンは少なそうだ。そういった意味で、CX-8は3列SUVの中でも新味のある存在だといえる。

他メーカーの2列SUVユーザーは潜在顧客なのか

日本でよく売れているSUVは、ホンダ「ヴェゼル」やトヨタ「C-HR」および「ハリアー」など、2列シートのクルマばかりだ。しかし、こういったクルマに乗っている人も、ライフステージが変われば多人数乗車の必要性に迫られるかもしれない。こういった人はSUVが気に入っているので、乗り換えが必要になった時にはCX-8を選択肢に加えるはずという高場氏の話も納得できるものだった。

  • CX-8の画像4

    「CX-8」は他メーカーのSUVから顧客を引っ張ってくることができるか

CX-8の販売状況は、他メーカーも注視しているかもしれない。実際のところ、3列SUVにどのくらいの需要があるのか。それが大きなビジネスになりそうであれば、他メーカーも商品を充実させてくるだろう。ホンダは来年、SUVの「CR-V」を日本市場で復活させ、3列シートモデルも導入するとすでに発表している。この市場は今後、激戦区になるかもしれないが、マツダは先行者としての立場をフル活用し、CX-8で存在感を高めておきたいところだ。