あしたのチームは12月1日、「中小企業の事業承継の実態と対策」に関するレポートを発表。同レポートは、2016年に休廃業・解散した企業数が過去最多を更新したことを受け、事業承継の実態とともに、事業承継を支える人事評価制度について考察している。
中小企業における後継者難・人手不足が深刻
東京商工リサーチの調査によると、2016年に休廃業・解散した企業数が過去最多を更新。その一方で、倒産件数は減っているという傾向から、後継者難や人手不足など、人事の問題から自主廃業を選ぶケースが増加傾向にあるよう。
また、中小企業庁によると、今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず、6割が後継者未定の状態に。さらに、70代の経営者でも事業承継に向けた準備を行っている経営者は半数にとどまるなど、中小企業にとって、後継者難は深刻な状況になるという。
こういった現状を受け、中小企業庁は、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間と定め、「事業承継5ヶ年計画」を策定している。
事業承継を経営上の問題と認識
続いて、「企業の事業承継に対する意識」について、帝国データバンクが実施した調査結果をみると、「経営上の問題のひとつと認識している」(57.5%)と回答した企業が最も多く、半数を超えた。次点は「最優先の経営上の問題と認識している」で13.6%となり、およそ7割の企業が事業承継を経営上の問題として認識していることが明らかとなった。
事業承継前後に離職者増、待遇悪化の傾向
また、あしたのチームが「家族経営の会社に勤務し、社長が変わった経験がある従業員」を対象に、事業承継前後の変化について聞くと、「離職者が増えた」(25.0%)、「待遇(給与や福利厚生など)が悪くなった」(24.0%)、「社内の風通しが悪くなった」(15.0%)が上位となった。事業承継を検討している企業にとって、従業員に対する配慮も大きな課題となることが伺える結果に。特に、働き方改革の気運が高まっていることで、働く環境や報酬を判断する従業員の目が厳しくなっており、そのため、労使双方が納得する評価と報酬のための人事評価制度に対する経営者の関心も高まっているという。
あしたのチームの同調査によると、後任(会社の跡継ぎ)が未定の会社経営者のうち、すでに自社で人事評価制度を運用している経営者の約7割が、事業承継を成功させるために人事評価制度の刷新が必要だと回答したとのこと。従業員に対し説明責任を果たせる制度を持たないと、先代とのやり方の違いを論理的に示すことは困難。労使紛争も激化しており、特に経営者と従業員の距離が近い中小企業においては、人事評価制度は企業防衛にもなる施策と言えるようだ。