充電問題解決に2つの方向性

では、何が足りないのか。ガソリンで走るエンジン車であれば、車種にもよるが500~600キロを走るエネルギーを3分で充填(給油)できるが、EVの充電時間は設備によって10時間を超えたり、急速充電でも数十分を要するのが一般的だ。このエネルギー充填に関する問題が、EV普及の課題になっていると安部氏は指摘する。こういった課題を踏まえトヨタは、EVは現時点で、充電時間が短くて済むよう小さい電池を搭載し、通勤など近距離の移動に使う領域に向いているとの見方を示す。

充電の問題についてトヨタは、解決に向けた技術を「鋭意、開発中」とのこと。充電問題を解決するには「2つの方向性」があるという。

  • プリウスPHVの画像

    PHVやEVの普及に向け、充電の利便性向上が重要となる(画像は「プリウスPHV」)

まず1つ目の方向性は、充電に「ガソリンスタンドと同等の利便性」を持たせること。つまり、既存の充電設備を進化させて、多くの電力を素早くクルマに充電できるようにしていく道だ。しかし、この方向で進んでも給油にはスピードで「歯が立たない」し、充電時に損失するエネルギーの量も大きくなるそうなので、こちらの手法はあくまで非常用との位置づけだ。

充電問題解決に向けた2つ目の方向性として安部氏は、クルマが「止まっている時間をいかに活用するか」という視点を提示した。1日のほとんどを持ち主の自宅や職場などで止まった状態で過ごすクルマだが、この駐車の時間をフルに充電にあてることをシステマティックに考えるのが課題解決の道だというのだ。安部氏によると、この充電システムを確立できれば「どんどん(設置コストが)高い充電インフラを作るより、よほど効率的にEVを運用できると試算」しているとのことだった。

  • 初代プリウスのカットモデルの画像

    クルマが止まっている時間を充電に有効活用する道を探るトヨタ(画像は初代「プリウス」のカットモデル)

説明会では、トヨタのEVに関する取り組みで最近、話題を集めた2つのトピックについても語られた。それは「全固体電池」と「EV開発合弁会社」に関する話だ。