照明にもこだわり、RXビジョンとも共通項

会場に着くと、落ち着いたメタリックカラーをまとう流麗な4ドアクーペがターンテーブルに置かれていた。上からは、ターンテーブルと同じぐらい大きな円形の照明の柔らかい光が、ビジョン・クーペを照らしている。

円形の照明に照らされた「ビジョン・クーペ」

そのシーンを見た瞬間、筆者は2年前の東京モーターショーのマツダ・ブースを思い出した。そこには「Mazda RX-VISION」(RXビジョン)と名付けられたスポーツカーが、同様の舞台装置の中で展示されていた。

2年前は、マツダがロータリーエンジン搭載車に使って来た「RX」の2文字を用いていたものの、他のブランドもコンセプトカーに起用することが多い「ビジョン」という言葉を使ったところは共通しているし、なによりも、天井に仕込まれた照明のデザインが似ていた。

東京モーターショーに先立ちマツダが開催したイベント「マツダデザインナイト2017」で展示されていた「RXビジョン」

「艶」と「凛」で次世代のデザインを語るマツダ

マツダのデザイン本部アドバンスデザインスタジオでビジョン・クーペに関わった岩尾典史氏に話を聞くと、前回のRXビジョンと今回のビジョン・クーペには共通項もあるという。

魂動デザインは2010年に発表した「靭」以来、草原を駆けるチーターなど、生きた形をスタイリングにすることを普遍的な根源としている。その点では、2年前のRXビジョンと今回のクーペ・ビジョンは共通しているという。

「具体的には『艶』と『凛』、つまり艶やかさと凛とした部分を共有しているところは同じです。しかし、RXビジョンが艶やかさを重視して造形されたのに対し、ビジョン・クーペは凛とした部分を強調して造形したという違いがあります」(岩尾氏)

「艶」と「凛」を共有する「ビジョン・クーペ」と「RXビジョン」

凛とした部分とは、日本の美意識の中にある「引き算の美学」に宿っているという。これ見よがしに主張するのではなく、引くこと、省略することで生まれる余白の豊かさだ。マツダはこの部分を大切に考え、キャラクターラインなどの線で個性を表現するのではなく、面に当たる光の移ろいを表現することに挑戦したというのだ。

光の当たり具合を反映する面の表現

たしかにビジョン・クーペを見ると、現行「アテンザ」や「アクセラ」などに用いているボディサイドのキャラクターラインがない。RXビジョンもそうだった。線に頼らない、面で魅せるデザインを貫いている。