100年以上の歴史を有する松坂屋上野店。増築として昭和32(1957)年に建てられた南館は2014年春に閉館し、そしてこの11月4日、パルコとTOHOシネマズ、そして賃貸オフィスを備えた総合商業施設「上野フロンティアタワー」として新しいスタートを切る。各社はここを起点に、上野に馴染んだ"新しい挑戦"を始める。
老舗の松坂屋をリスペクトした「パルコヤ」
上野フロンティアタワーは、都営大江戸線「上野御徒町駅」より徒歩1分、また、JR「御徒町駅」より徒歩2分という立地。地上23階・地下2階・塔屋1階からなる高さ約117mのビルは、近辺に同等の高層ビルがない上野の街でとてもよく目立つ。地下1階が大丸松坂屋百貨店、地下1~6階がパルコ、7~10階がTOHOシネマズ、12~22階がオフィスで構成されており、パルコが東京23区内で新店舗を構えるのは、昭和48(1973)年にオープンした「渋谷PARCO」以来、44年ぶりとなる。そのパルコは、上野で「PARCO_ya」という新業態を展開する。
大丸松坂屋百貨店を傘下に擁するJ.フロント リテイリングが、パルコを子会社化したのは2012年のこと。この頃にはすでに、南館跡地に建てる複合施設にパルコを進出させるという構想があったという。
ネーミングに関してパルコ代表執行役社長の牧山浩三氏は、「歴史ある松坂屋へのリスペクトとして、同じ"ヤ"が付く"パルコヤ"がいいんじゃないか、というのがそもそもの話。その後、威勢のいい掛け声の"○○ヤ~"や、日本の老舗をイメージさせる"○○屋"という意味合いを膨らませ、『PARCO_ya』というネーミングにした」と語る。
パルコに対して、「渋谷PARCO」が代表するようなサブカルチャーをイメージする人も多いだろう。その意味で言うと、「PARCO_ya」は既存のパルコとは異なり、伝統をテーマにしたオシャレな大人のたまり場になるような空間を目指している。また、随所にパンダモチーフの商品が並んでいるのは、もちろん、上野という街を意識したものだ。
地元・上野の名店が新しい風を吹き込む
店舗展開には地元民の声も反映し、厳選された全68店舗をそろえた。上野・御徒町エリア初登場の店舗は約8割となる52店舗、そして、地元ゆかりの企業や約2割となる11店舗がそろう。コスメ・ファッション雑貨・フードがそろった1階には、黒木純氏がオーナーシェフをつとめる日本料理店「くろぎ」の新業態となる、和カフェ&バー「廚 otona くろぎ」が出店している。
「廚 otona くろぎ」は、もともと湯島に店を構えていたくろぎが「礎を築いた上野にくろぎを残したい」という想いから誕生したお店だ。店内では湯島のお店と同様、ジャズが流れ、建築家・隈研吾氏がデザインしたシックな内装が特長となっている。同店限定の「黒蜜きなこパフェ」(税込1,700円)と「抹茶パフェ」(税込1,800円)には、葛もちやアイス、カステラ、ソフトクリームなどがたっぷり盛られ、ラム酒の入った黒蜜が別添えになっているのがなんとも心憎い。
2,3階はファッションエリアとなっており、中でも2階のバッグ「KURA CHIKA by PORTER」は、上野で技を磨いた吉田吉蔵氏が創業した「吉田カバン」の専門店。同店でクラチカオリジナルの新シリーズ「PORTER THINGS」を先行発売する。また、旧南館でも人気があった、フレッシュケーキ&カフェ「ハーブス」(2階)と甘味処「あんみつ みはし」(3階)は、かつてのファンも喜ばせてくれる存在となるだろう。4階はコスメ雑貨・美容室が、5階にはファッション・雑貨・トラベルカウンターがそろう。
6階のレストランエリアは「口福回廊」とネーミングされており、素材にこだわった9店舗がそろっている。地元のゆかりのお店として、明治25(1892)年創業の「上野 藪そば」が初めてビルインして展開する「うえの やぶそば」も軒を連ねる。代々受け継がれてきた江戸蕎麦に加え、新しいチャレンジとして和ガレットの「そば鼓」を月替わりで1種類ずつ展開する。蕎麦粉がもつ風味に加え、もちっとした食感もパリッとした食感も、両方楽しむことができる。
そのほか、北海道から毎日直送される食材を使用したハンバーグ専門店「くろまる」や、石川・金沢の名店「金沢まいもん寿司」、リーズナブルにワインを楽しめる「上野 ワインバル八十郎」、厳選された黒毛和牛を提供する「上野 焼肉 陽山道」など、和洋中の料理を取りそろえている。この6階には、案内ロボット「Siriusubot(シリウスボット)」を導入。日本語と英語で案内してくれるほか、走行して目的のショップまで案内してくれる。
上野フロンティアタワーには「PARCO_ya」以外にも、3つのエリアが広がっている。また、タワーの開業に合わせて、松坂屋上野店本館にも新しいエリアが生まれ、新しいサービスが始まる。