工場の最終完成検査で無資格者が携わっていたことが明らかになった日産自動車。世界覇権を狙う国際アライアンスの中核企業として、ブランド価値を守るという大きな課題にも直面する事態となった。
完成検査の実態は
日産は9月29日金曜日の夜7時から国交省で記者会見を行い、さらに週が明けた10月2日の月曜日には西川廣人社長による緊急記者会見を開いた。西川社長は「ものづくりの世界にあってはならないこと。心からお詫びしたい」と陳謝するとともに、2014年10月からの生産分にさかのぼる国内向け車両約121万台のリコール(回収・無償修理)を届け出ると説明した。
ことの発端は、9月29日に日産から以下の資料発表があったことからである。
それは「出荷前の完成検査を未承認者が行っていた」というもので、対象は国内における日産の追浜・栃木・九州各工場と子会社である日産車体の湘南・京都・九州の6工場。
自動車工場の出荷前の検査は、自動車会社が自主的に決めた検査経験や知識を持つ検査員が行わなければ、完成検査を完了したことにはならない。国土交通省はこれを通達で定めているが、保安基準に適合しない車両が検査不備で出回らなければ、法令違反とはならない。
「あってはならないこと」
つまり、日産のケースは法令違反ではないが、通達違反ということである。しかし、一般に自動車工場の最終完成検査は、工場の検査員が規定の検査をして完成検査修了証を発行することで初めて販売会社に卸すことができる。一般に、ここで違反することはありえない。ユーザーに新車を納車するのは、その後に運輸支局や検査登録事務所で新規登録し、ナンバーをつけた後である。
工場での最終完成検査を補助員や見習い従業員に任せていたということは、自動車会社の生産ラインで「あってはならないこと」(西川社長)で、日産に何があったのか、ユーザーの信頼感喪失に加え、ユーザーとの接点に立つ販売会社の困惑は大きい。
特に、日産はここへきて日本国内販売に商品力強化でテコ入れを進めてきた最中でもある。皮肉にも、新型電気自動車(EV)「リーフ」の発売日に重なった10月2日の「陳謝会見」は、同社が期待を込める新車の登場に冷や水を浴びせるものになった。