生後6ヶ月を過ぎたのに、おっぱいやミルクばかりで離乳食をほとんど受け付けてくれない。昨日まで食べていた離乳食を、ある日突然イヤがるようになる……。まさに「ストライキ」とも言える赤ちゃんの不可解な食行動に、ママやパパは戸惑うばかり。

そこで、乳幼児期の食に詳しい管理栄養士で、各大学で講師も務める太田百合子先生に「赤ちゃんの離乳食ストライキ」について伺った。

離乳食を食べてくれないときはどうしたらいい?

離乳食を始める時期は生後5、6ヶ月頃から

離乳食のスタートは生後5、6ヶ月頃といわれるが、この時期に始めるのにはいくつか理由がある。
・母乳やミルクだけでは必要な栄養を満たせなくなる(栄養補給)。
・食物を体に取り入れることで、徐々に胃や腸を発達させる(消化器官の発達)。
・「噛む力」をつける(咀嚼の練習)。
・味覚の世界を広げる(好奇心を育む)。

離乳食には健康な体をつくるだけでなく、食べることを楽しめる子に育てるという意味もある。ただし、食べさせ方を間違えると、食事自体が嫌になるケースも。「離乳食ストライキの原因はさまざまですが、もっとも多いのが、赤ちゃんの口の発達に合わせた調理をしていないことです」と太田先生は指摘する。

赤ちゃんの口の発達に合わせた調理を

たとえば、5、6ヶ月では、赤ちゃんは舌をまだ前後にしか動かせない。つまり、食べ物をそのまま喉に運ぶことしかできないのだが、7ヶ月頃には少しずつ舌を上下に動かせるようになる。これは「食べ物を上アゴに押しつぶしてゴックンできるよ」というサイン。

ただし、まだ歯が十分に生えていないため硬すぎるものは飲み込めない。そこで、食材を柔らかく茹でたり、小さく切ったりと調理を工夫することが必要だ。そうでないと、口の中のものを吐き出し、次からはその食材を食べなくなってしまうこともあるという。

一方で、舌と上アゴで食べ物をすりつぶせるくらいに成長したのに、柔らかいものばかりを与え続けるのもNG。丸飲みすることを覚えて、赤ちゃんが物足りなさを感じ、食べてくれなくなることも。

「単にマニュアルどおりに月齢で調理法を決めるのではなく、赤ちゃんの食べる姿をよく観察して、その子の発達に合わせた形状や柔らかさであげるようにしましょう」と太田先生。

前歯の発達はお粥からご飯に切り替えるサイン

特にわかりやすいのが前歯(乳中切歯)で、ここは第一の消化器官と言ってもいい部分。前歯が生えそろってきたら、お粥でなくご飯に切り替えていいし、おかずも食べられる。「中には成長がゆっくりで、1歳3ヶ月頃でパン粥程度しか食べられないという子もいますが、発達のスピードは人それぞれ。決して焦ることではありません」(太田先生)。

素材に合わせて調理法を変えることも大事なポイントだ。例えば、7ヶ月頃にはにんじんやかぼちゃ、かぶなどの根菜は茹でて粗みじんにすると食べやすいが、ほうれん草や小松菜などの葉野菜は赤ちゃんの舌だけではつぶすことができないので、葉先だけを柔らかめに茹でて、さらにとろみをつけて食べやすくする。

そのほか、肉や魚などのタンパク質素材は火を通すと硬くなるので、豆腐と混ぜたり、あんかけにすると良い。それでも食べにくそうだったら、粗みじんにしてスープにする、お粥に混ぜるなど、レシピを参考にしながら臨機応変につくってみよう。

調理法の工夫はもちろんだが、そもそも赤ちゃんに空腹感がなければ食べてはくれない。「離乳食ストライキの原因には、母乳やミルクのあげすぎも考えられます。『欲しがるから』『グズるから』といって時間を決めずに与えるのは控えましょう」と太田先生。まずは食事の時間に合わせて赤ちゃんがお腹を空かせた状態にし、足りない分を母乳やミルクで補う、という習慣をつけてみてもいいだろう。

※画像はイメージ

太田百合子先生 プロフィール

東洋大学、東京家政学院大学など非常勤講師・管理栄養士。「こどもの城」小児保健クリニックを経て、現在は大学などの非常勤講師、指導者や保護者向け講習会講師、NHK子育て番組出演や育児雑誌などの監修を務めている。主な役職は、日本小児保健協会栄養委員会、東京都小児保健協会理事、日本食育学会代議員など。監修した著書は「はじめての離乳食 前半5~8ヶ月ごろ」(学研プラス)、「初めての幼児食 最新版」(ベネッセコーポレーション)など多数。