WOWOWの『連続ドラマW 沈黙法廷』(9月24日スタート 毎週日曜 22:00~ 全5話・1話のみ無料放送)で、主演を務めた永作博美にインタビュー。原作は『廃墟に乞う』や『警官の血』などの直木賞作家・佐々木譲が初めて挑んだ法廷ミステリー小説で、永作は連続殺人事件の容疑者役に扮し、静謐な演技で観る者の心に揺さぶりをかけていく。

永作博美

老人の不審死が連続する中、捜査線上に浮上したのは、家事代行の山本美紀(永作博美)だった。マスコミの報道は加熱し、警察や世間、彼女の関係者が抱く美紀の人物像は多岐にわたっていくが、彼女を愛する高見沢弘志(市原隼人)だけは、美紀の無実を信じ続けていく。

永作は、美紀役のオファーについて「私の中ではかなり新しい役どころで、紙一重の際どいところに入っていくなあと思いながらお引き受けしました」と振り返った。

――監督からは、演じるにあたりどんなリクエストが入りましたか?

監督ご自身も「ずっと毎日美紀のことを考えてずっと悩んでます」とおっしゃっていました。まだ、台本上でも考えているところがあると、みなさん、頭をフル回転している時でしたから。実際にやってみないと、見てみないと、発してみないと感じがわからない点が多かったので、さじ加減は現場で一緒に作っていった感じです。

――実際に演じてみてどういう点が難しかったですか?

普通にしゃべること自体が難しかったです。事実だと言っていることを、何度も何度も話していくという過程で、変化があるのかないのかがまずわからない。もちろん私は、真実をずっと話しているつもりですが、どこかあやしく見えてくるという自然現象が起こるわけです。それってどういうことなんだろう?と今も戦っています。

――山本美紀についてはどういう印象を持ちましたか?

かわいそうな人なのかもしれないと思いました。ただ生まれて生きてきただけなのに、なぜこんなにいろんなことが起きてしまうんだろうと。それでも美紀は自分勝手に運命を恨むでもなく、自分はそういう境遇で生まれてきたんだと思ってしまう人。前に進みたくても進めない女性なのだと思いました。

――市原隼人さん演じる弘志と過ごすシーンの美紀は、幸せに満ちた表情を見せています

美紀にとって弘志との出会いは、この世にいながら天国を感じたようなものだったと思います。こんなに感情を揺さぶられ、温かくなる気持ちがあるんだなと。でもそこでいろいろと余計なことを考えてしまい、上手くいかないのが美紀なんです。自分の不運を勝手に背負っていて、幸せに踏み出す勇気がもてないんです。これ以上誰にも迷惑をかけたくないから、ひっそりと誰にも気づかれずに生きていこうとする人なので。

――市原隼人さんの印象はいかがでしたか?

本当に優しい人で、まだまだ知りたいと思える人。若いなあとも思いました(笑)。素直にお芝居をする素敵な方だと思います。また、一途な恋愛というのはなかなか描きにくいイメージがありますが、今回の脚本は純愛を貫いている感じがしていて、そこはすごく素敵だなと思いました。

――今、40代ですが、女優としてのスタンスについてお聞かせ下さい。

40代も忙しいんだなと(笑)。それは幸せなことですね。実際には変わらないです。相変わらず生きていることって楽しいなと思っています。まあ、40代はもう少し大人になっていると思っていましたが、あまり変わってないです。

きっとみなさんは会社などにいる中で、仕事によって変わっていくことがあると思いますが、私たちの場合はもらった役などで成長させてもらっているのかなと。役が変わってきている分、またそこで楽しませてもらっているのかもしれない。相変わらず難しい役をふってくださるのでありがたいです。

――美紀役をはじめ、かなり難しい役どころが多い気がしますが、出演作はどういう点から選んでいますか?

自分でちょっと助けられるところがあるかもしれないと思う役はやりたいと思っています。脚本だと、まだ埋まっていない空白があって、自分が演じることで、どうしたらいいのかと考え、その役を助けられると思ったらたぶんやります。そういうイメージです。

だから、変な話「助けるのは私じゃない」と思ったらたぶん考えちゃいますね。はっきりとした明確な理由はないんです。また、私のもとへ来たのも縁だとも思いますし。

若い頃はそんなことは考えてもいませんでした。どうやっていいのかわからなかったし、とにかく必死でしたから。30歳を超えたぐらいから、このままじゃ違うと思い始め、そこからどんどん仕事の意味を求めていって、そういうふうになっていった気がします。