「母親1人で育児を背負い込むのではなく、保育園を中心に"周囲にいる愛情のある大人たち"と連携を組む育て方もあるのでは?」と提案する、育休後コンサルタントの山口理栄さん。今回は、親が世間とつながることで、さらに保育園に預ける罪悪感を払拭する方法について伺った。

実は筆者も子育て中のママだが、子どもを預けている親として不安になるのは、やはり「もしもの時」。子どもが急に高熱を出したら、大地震が起きたら、自分が事故にでも遭ったら……。こんな「もしもの時」が頭をよぎるたびに、保育園に預ける不安は増大するのだ。備えあれば憂いなし。もしもの時、保育園とはどのように連絡を取ったら良いのだろうか、事前にどんな準備をしておくべきなのか。

子どもを保育園に預ける親が「もしもの時」のためにしておきたいこと(写真はイメージ)

必要なのは複数の連絡手段と保護者役

子どもができてから、2度の震災を経験したという山口さん。「1995年、阪神淡路大震災の時には、私は生後2カ月の子どもを抱え、神奈川県でニュースを見ていました。その16年後、東日本大震災の時には息子は高校に泊まることになりましたが、学校からの連絡網によって連絡があったので大きな心配はありませんでした。つい、忘れてしまいそうになることもありますが、地震国の日本では、普段から準備をしておかなければなりません」。

山口さんの息子さんが通っていた保育園では毎月避難訓練があり、「こんなに頻繁にするべきなのだろうか」と思うこともあったそう。しかし、東日本大震災の時には多くの保育園で日頃の訓練が功を奏し、子どもたちは保育士さんの声かけに従い、訓練通り行動することができたそうだ。保護者も、災害時の対応について準備しておくべきことがある。

では、具体的にどんな点をチェックしておくべきなのだろうか。次の2点を山口さんは挙げる。

(1)保育園から保護者への安否確認、保護者から保育園へのお迎え時刻等の連絡手段を複数登録しておくこと。2011年の震災では、電話やメールはつながらなくても、Twitterで連絡がとれた事例が多数紹介された。最新の運用を園に確認しておこう。

(2)保護者以外に保育園の近くに住んでいる人(家族、知人など)をお迎えメンバーとして登録しておくこと。保護者以外のお迎えは、事前登録が必要であり、手続きは園によって異なる。災害時などに頼む可能性がある人にはあらかじめお願いし、登録しておくとよい。

保育園側の備えについても確認を

また山口さんが参考資料として勧めてくれていた『災害時の保育園の危機対応に関する研究』(石井博子ら)は、今後の参考にしたい貴重な論文だ。

東日本大震災を経験した保育園(日本保育協会の会員園)を対象に調査を行い、災害時に保育園が園児の安全を守るため、どのような対策を立て、発災後にどのような対応をとっていく必要があるかを明らかにするべく、まとめられたレポートとなっている。

そこには、災害経験を踏まえた「保育園で検討すべき内容」が書かれているが、親としては、子どもを預ける保育園において、どの程度災害への備えがされているかチェックする時の指標にしてもらいたい。例えば、以下のような点が参考になるだろう。

(1)従来「水・食料の備蓄は3日分」と言われるが、実際に保育園で水・食料の準備をしっかりしているか、またミルクやアレルギー体質の子どもへの食料への配慮があるかなどを確認する
(2)保育園の緊急時のマニュアルがどういった内容かチェックする
(3)交通ストップにより、親が子どもを迎えに行けない場合の保育園の対応について事前に確認しておく

育児は周りの協力やネットワークが必要だ。ひとりで抱え込まず、さまざまな方法を試してみよう。保育園は基本的に子どもを安心して預けられる場所であるはず。分からないことがあったら遠慮せずに話をして不安を払拭し、安心して仕事との両立を楽しもう。

山口理栄さん プロフィール

1984年4月、総合電機メーカー入社。ソフトウェア開発部署にて大型コンピュータのソフトウェアプロダクトの開発、設計、製品企画などに従事。2度育休を取り、部長職まで務める。2006年から2年間、社内の女性活躍推進プロジェクトのリーダーに就任。2010年より育休後コンサルタントとして法人向け各種研修サービスを提供するほか、個人向けには育休後カフェ、育休後面会相談などのサービスを提供している。著書に『改訂版 さあ、育休後からはじめよう~働くママへの応援歌』(労働調査会)、『子育て社員を活かすコミュニケーション【イクボスへのヒント集】』(労働調査会)がある。
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