キャラや設定のリアルさに厳しい声

では、肝心の『セシルのもくろみ』の満足度はどうだろうか。その結果は、初回で2.96と、ゴールデン・プライム帯の夏ドラマワースト2だった。初回2.91でワーストだったカンテレ・フジ系『僕たちがやりました』が、第2話で3.54へ急上昇したのに対し、『セシルのもくろみ』の第2話は2.77と第1話からさらに下げてしまっている。枠自体の悪い流れと、低い満足度が重なったことが、視聴率にもかなり影響しているものと推測される。

『セシルのもくろみ』主演の真木よう子

低満足度となってしまった理由を、自由記述による視聴者の感想からひも解くと、「真木さんのべらんめえ口調がなじめなかった」(55歳女性)、「真木よう子、好きだけど、この役はなんか嫌」(47歳女性)など、ネガティブな意見を寄せている視聴者のほとんどが、真木演じる主人公のキャラクターへの違和感を挙げた。

また、「ストーリーにリアリティーがなく、がさつな印象しか残らなかった」(52歳女性)、「見ていて現実味がないのはキャステイングと設定に無理があるから」(61歳女性)、「主人公の人物描写が非現実的すぎて、今一つ入り込めない」(49歳男性)など、"リアリティー"について触れた感想も多く、真木の突飛なキャラクターが、ドラマ全体のリアリティーを崩してしまっているようにもとれる。

このドラマは、主人公である普通の主婦が、ファッション雑誌の読者モデルから一流モデルへと上り詰めていく様を、憧れの専属モデルや編集者など携わるスタッフたちや、その家族にもスポットを当てて描いた群像劇。吉瀬美智子や伊藤歩、長谷川京子、板谷由夏などの美しい女性陣、リリー・フランキーや金子ノブアキ、チュートリアルの徳井義実など個性豊かな男性陣と、濃すぎるキャラクターたちに埋もれまいとするように、主演の真木は、口も行儀も悪いが自分に正直な喜怒哀楽の激しいキャラクターを熱演しているが、それが逆効果となってしまい、視聴者には受け入れがたいとされてしまったようだ。

主人公の今後の"変化"を楽しむ

だが、もちろんネガティブな感想ばかりではない。「真木ようこさんの演技に迫力があり、行動的で動きもおもしろくて新鮮!」(57歳女性)、「真木よう子さんが演じる主人公が今後どの様に変わって行くのか興味深い」(48歳男性)など、これまでにない新しい"真木よう子"を楽しんでいる視聴者や、彼女がドラマの中でどう変化し、どんな演技を見せるのかに期待を寄せる視聴者も多い。

このドラマは1人の女性の成長物語でもある。序盤はマイナスに感じる彼女のキャラクターも、「これからどう変化していくか」という点で見ると、その極端なキャラ造形が物語全体の伏線にも思えてこないだろうか。その変化を楽しむことにこそ、連続ドラマを楽しむ醍醐味だろう。

「木曜劇場」前クールの『人は見た目が100パーセント』(左から 水川あさみ、桐谷美玲、ブルゾンちえみ、主題歌を歌ったJY)

また、これまでの「木曜劇場」の流れで見ても、昨年の『営業部長 吉良奈津子』から『嫌われる勇気』まで、3クール連続で強い女性をヒロインに据えた分かりやすいキャラクタードラマが続いてきたが、それらは視聴者に分かりやすさや気軽に見てもらおうという工夫に苦心するあまり、視聴者を驚かせようとする"新しさ"は見えてこなかった。

だが、前クールの『人は見た目が100パーセント』では、恋愛ドラマにコント的な笑いの要素を入れてみたり、今作でも、オーソドックスなシンデレラストーリーの中にトリッキーな主人公を放り込んで化学反応を楽しんだりと、停滞しているドラマに対して新風を起こしたいというドラマの作り手たちの"熱"が感じられる流れはできている。

現段階では視聴率や満足度で結果は残せなくても、今後のドラマの未来を占う上で、決して無駄にはならない意欲作であることは間違いない。