独ダイムラーの排ガス不正疑惑から、仏・英政府が相次いで打ち出した自動車販売における「脱石油」の方針と、ディーゼルエンジンには欧州発の逆風が吹いているように見える。「クリーンディーゼル」を強みの1つとするマツダは、この流れをどのように受け止めているのだろうか。決算会見のやり取りから探った。

残る可能性、「CX-5」ディーゼル版の北米投入も変更なし

2017年8月2日、マツダが開いた2017年度第1四半期の決算会見では、欧州で再燃したディーゼル不正疑惑と仏・英政府が打ち出した方針を踏まえて、クリーンディーゼルに注力するマツダとして、今後の戦略や車種の展開などに影響はあるかと報道陣から質問があった。

この質問に対しマツダの藤本哲也常務は、欧州の動きは報道などで認識していると前置きした上で、「まだまだディーゼルの可能性は残っている」と明言した。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べCO2の排出量が少ないという特徴があり、その排ガスには大気汚染の原因となる有害物質の窒素酸化物(NOx)を含むものの、マツダとしてはNOxを出さないクリーンディーゼル車に今後もチャレンジしていくという。

「ディーゼルを含めた内燃機関がCO2削減のデバイスの1つになることは間違いないと考えており、これに取り組む姿勢に微塵も変わりはない」と語ったマツダの藤本常務

マツダの第1四半期決算で、販売好調が伝えられた同社の主力SUV「CX-5」だが、今年度後半には、北米市場向けにディーゼルエンジンモデルの投入計画がある。昨今の情勢が、ディーゼルエンジンのイメージ悪化につながれば販売に影響が出かねないが、マツダとしては北米向け車種展開の計画変更は考えていないそうだ。そもそも米国では、ディーゼルエンジンのクルマがあまり普及していないという前提条件があるらしいが、CX-5のディーゼル版が、北米でどんな反応を呼び起こすのかは気になるところだ。

2017年2月に日本で発売となった新型「CX-5」。グローバルでの販売が本格化しており、マツダは生産能力の増強を急いでいる

内燃機関に注力の構え、電動化への対応は?

ディーゼルエンジンを含め、内燃機関に引き続き注力していく構えのマツダだが、では、電気自動車(EV)を作らないつもりなのかというとそうでもない。

仏・英政府が、2040年までに内燃機関を搭載するクルマの新車販売を禁止するとの方針を打ち出したことで、クルマの電動化の流れが急激に加速しそうな感じのする自動車業界だが、藤本常務によれば、マツダは「いきなりEVにいく」のではなく、欧州であれば、まずは「ユーロ6」や「RDE(実路走行排気)規制」といった現在の環境規制を確実にクリアしていくのが重要との考えだ。EVについては「今後やっていくべきこと」とし、アライアンスも含めた検討や準備を始めているという。

マツダは8月8日に会見を開き、今後の技術開発について長期ビジョンを発表する予定としている。その中で示されるであろう、マツダの電動化に関する長期的な考え方は、間違いなく最重要ポイントの1つになるはずだ。小飼雅道社長が自ら方針を語る発表会で、マツダがどんな姿勢を打ち出すかに注目したい。