東京の竹芝から南に1,000km、大海原に浮かぶ小笠原諸島。世界自然遺産に認定された独自の生態系、青くどこまでも澄んだ海に憧れる人も多いことだろう。アクセスは、週に1便運行される定期船「おがさわら丸」のみで、所要時間は片道24時間だ。往復の船旅と現地停泊時間をあわせると、最低6日間の休暇が必要になる。
ハードルの高い小笠原の旅だが、今夏、わずか3日間の休暇で小笠原へ行けるチャンスが到来する。「着発便」と呼ばれる、行ってすぐに戻ってくるピストン輸送便が運行されるのだ。ただし船がスピードアップするわけではないので、現地滞在時間はわずか「4時間半」。されど「4時間半」。ゆえに、超弾丸でも楽しめる小笠原への旅を提案したい。
「おがさわら丸」オススメのクラスは?
まずは東京・竹芝と小笠原諸島・父島を結ぶ定期船「おがさわら丸」のチケットを手配しよう。小笠原海運のホームページで、空席状況の確認とネット予約が可能だ。
今夏は「着発便」が11便運行される。運航日、スケジュール、運賃は以下の通り。リアルタイムで空席照会ができるので、計画が立てやすい。ネットで予約すれば割安になるが、gmailアドレス、アップル系の携帯端末では予約不可となっているので注意しよう。
着発便運行日
7月19日、22日、26日、29日
8月2日、5日、9日、12日、16日、19日、22日
スケジュール
1日目)11時 竹芝発~24時間フリータイム
2日目)11時 父島着→15時30分 父島発~24時間フリータイム
3日目)15時30分 竹芝着
定期船「おがさわら丸」片道運賃(ネット割)
特等室 7万6,920円(7万4,620円)
特1等室 6万9,690円(6万7,600円)
1等室 5万4,040円(5万2,420円)
特2等寝台 3万9,030円(3万7,860円)
2等寝台 2万9,410円(2万8,530円)
2等和室 2万5,820円(2万5,050円)
オススメの客室は、2等寝台と2等和室だ。2等寝台はひとりあたりのスペースは狭いながらも、快適な環境になっている。 男性ならば少々窮屈に感じるかもしれないが、コンセントと照明、遮光カーテンがついているので、完全にプライバシーが守られる。
2等和室はカーペット敷きの広間での雑魚寝スタイルだが、ひとりあたりのスペースが頭部の仕切りによってはっきりしている。プライバシーはないが、他の旅行者や島民との出会いも楽しみたい人にはぴったりだろう。
船内には共有スペースも多いので、移動しながら過ごすのも楽しい。7デッキの展望ラウンジ「Haha-jima」は飲食の営業時間外も開放しており、持ち込みもOK。甲板のベンチで海風に吹かれて過ごすのもいい。
小笠原旅も備えあれば憂いなし!
東京湾を出ると、携帯電話のアンテナピクトが1本消え、2本消え、長時間携帯がつながらない世界が待っている。飛行機内でもインターネット接続できる現代社会から、完全に隔絶されるデジタルデトックスの旅だ。なお、父島では電波環境は良好である。
片道24時間という船旅も、余すことなく楽しみたい。そこで、船上で使えるアイテムも含めて、小笠原旅のおともに連れていってほしいアイテムたちをまとめてみた。また、船内や小笠原の現地で調達できるものもあるので、最小限の荷物で旅行をしたい人は参考にしていただきたい。
持っていきたいもの
・双眼鏡(野鳥や島を観察)
・酔い止め薬(船内では買えないので必携。島民オススメは「アネロンニスキャップ」。船に非常に弱い筆者だが、この薬のおかげで嘔吐までは経験したことがない)
・サンダル(シャワー室に行く時にも便利)
・SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー(船内の売店やレストランで利用可能、現金を持ち歩かずに済むので楽。船内でのチャージ&島内での利用不可)
・端末にダウンロードした映画
・本(船内売店でも雑誌と単行本、ガイドブックは入手可能)
・ウォーターシューズ(海で泳ぐ人。島内のお土産店で現地調達も可能)
・免許証(バイクを借りる人は必携)
・健康保険証
船内で調達可能なもの
・軽食、ドリンク類(コンビニとあまり価格は変わらない)
・タオル、Tシャツ(オリジナルTシャツ2,000円など、お手頃価格)
・シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ(シャワー室に常備)
・ドライヤー(シャワー室の洗面台にあり)
・ゴミ袋(船内各所にある)
現地調達可能なもの
・スノーケルセット(かさばるのでレンタルが便利)
24時間、眠るもよし、飲み明かすもよし
ひとたび乗船すれば、24時間が丸々自分のものになる。誰にも邪魔されない自分だけの時間だ。季節によっては自然ガイドが乗船していて、船外レクチャーを開催する便もあるが、基本的に何のアクティビティも用意されていない。船内テレビでの映画上映もあるが、時間も限られ、好みの作品とは限らない。
小笠原在住だった筆者は、乗船する度に分厚いミステリーを数冊持ち込んでいた。文字は大きめのものがオススメだ(小さいと酔いそうになる)。ラウンジ「Haha-jima」でコーヒーを飲みながら、甲板で潮風に吹かれながら読書三昧。船室で横たわりながら読んで寝落ち。寝ては読書、寝ては読書とぜいたくな時間を過ごした。
出港から約3時間の間、東京湾のクルージングが楽しめる。お台場、羽田空港から離発着する飛行機、レインボーブリッジなどを甲板からゆっくり眺めよう。もちろん、どう過ごすかは人それぞれ。以下は船内での楽しみ方の一例である。
デジタルデトックス
三浦半島と房総半島の間を進みながら、アンテナピクトの数が次第に減っていく。東京湾を出ると、途中の島に近づくと入る場合もあるが、父島に近づくまでほとんど圏外となる。
360度の大海原と空を眺める
甲板に出て、水辺線に沈む夕日、満天の星空、幻想的な朝日など、ダイナミックな風景を体感しよう。22時~翌朝日の出の30分前まで甲板への扉は閉鎖されるので注意。
読書&ダウンロードムービー鑑賞
積読になっていた本を消化するチャンス。ムービーは携帯圏外なのでストリーミング再生は不可。観たいものはあらかじめダウンロードしておこう。
海鳥ウォッチング
カツオドリ、オナガミズナギドリ、アジサシ類など、本島では見られない鳥の撮影を目的に弾丸旅行する人々もいる。
終わらない飲み会
乗船してすぐに飲み会を始めるグループも多い。仲間ができれば一緒に飲むもよし、ラウンジやデッキでひとり飲むもよし。酔ったらすぐに客室で眠れるのもイイ。
ひたすら寝る
日頃の寝不足を心ゆくまで解消しよう。愛用の酔い止めは眠くなる作用があり、筆者は自分でも驚くほど眠れてしまう。島民の定番の過ごし方でもある。
翌朝デッキに出ると、海の色が深く青く変化しているのに気づくだろう。甲板から聟島(むこじま)列島が見えてくれば、長い船旅も残りわずかだ。11時近くに、汽笛を鳴らしながら「おがさわら丸」はゆっくりと青く澄んだ二見港に入港する。甲板に出ると、その音を合図に島の各所から送迎の車が集まってくるのが見える。タラップから降りると、南国特有の柔らかい熱気に包まれる。
さて、出港まで4時間半。続いては、そんな限られた時間の中で目一杯遊ぶポイントを紹介しよう。
※価格は税込