2011年に全館リニューアルを果たし、斬新な展示方法で世界中から注目を集めている「サンシャイン水族館」。昨年より改装工事が進められていた屋外エリアの大幅リニューアルが完了し、7月12日からいよいよ世界初の展示を取り入れた「"新"天空のオアシス」がお目見えする。ひと足先に新展示を見てきたので、その全貌をお届けしたい。

ペンギンが空を飛んでいる!?

ぺ、ペンギンが、空を飛んでいた……!

今回、リニューアルした屋外エリア「マリンガーデン」には、5つの新展示が登場。"世界初"展示も見られるということで、ワクワクしながら会場に足を運ぶと、真っ先に目に飛び込んできたのは頭上を覆うように大きくオーバーハングした巨大水槽だった。そこで悠々と泳いでいたのはケープペンギンたち。なんと、空を飛んでいるっ!!

世界初の展示「天空のペンギン」

都会の空をスイスイと気持ちよさそうに泳ぐペンギンたち。ここが、高層ビルの屋上であることを忘れ、さらには自分が空にいるのか水中にいるのか分からなくなる……そんな不思議な感覚になった。

スピーカーからは水の音が流れ、幻想的なムードを演出する

各日11:45~と15:45~に行われる「ペンギン・ダイビングタイム」では、弾丸のように素早く飛び交うペンギンたちの姿が見られる

見れば見るほど、幻想的な光景に圧倒されてしまう。この斬新な展示はどのように生み出されたのだろう? 同館のプロデュースを担当している水族館プロデューサー・中村元さんに話を聞いてみた。

「いつも水族館の新しい展示を企画するときには、"お客さまも生き物と同じように水の中にいるような感覚"で楽しめる展示をつくろうと思っています。ただ水槽を眺めて生き物の特徴や外見を見るだけなら、水族館じゃなくて本の図鑑で十分。せっかく水族館に足を運んでくださったお客さまには、水の世界に入って生き物たちのイキイキとした日常を見てもらいたいんですよ」

氷じゃなくて、草原を歩き回るペンギン!?

新しく登場する5つの展示エリアでは、中村さんが話していた"生き物たちのイキイキとした日常を見て欲しい"という想いが、どの展示エリアからも伝わってくる。次に訪れた展示「草原のペンギン」もまた喜々としたペンギンたちの姿が見られる。

世界初の展示「草原のペンギン」

草原の中をテクテク歩くペンギンたち

ペンギンと言えば、冷たい雪や氷の上を歩いているイメージがある。 ところが、この展示は、草が生い茂るゴツゴツとした岩山。中村さんいわく「ペンギンは必ず寒い場所にいると思われがちですが、実際にはこうした草原や岩場に暮らしているペンギンも沢山います。いつも暮らしている場所を再現することで、ケープペンギンたちの本来の生活が見られるようにしました」

各日10時45分~と13時30分~行われる「ペンギン・フィーディングタイム」。パネルを使ったペンギンたちの生態解説や給餌シーンが見られる

険しい岩山をひょいひょいと上り下りするペンギンたち。水族館や動物園では、いつも氷の上で大人しくしているイメージがあるが、彼らは超アクティブだ。また違ったペンギンの一面が見られるとあって楽しい。

この他にも3つのインパクト大な展示が登場

屋上エリアの頭上に張り巡らされた全長30mの通路「天空パス」には、モモイロペリカンたちが暮らす。ペリカンって、遠目にしか見たことがなかったのだが、ここではすぐ頭の上を歩き回っている。間近で見たペリカンは、意外にも大きくて迫力満点。

ビルをバックに、ペリカンが佇む不思議な光景

通路は透明なので、真下からもペリカンの姿を見られる

まん丸の水槽「きらめきの泉」には、アマゾン川の魚たちが泳いでいる。展示されているのは全長1mにもなるアロワナやドラド。屋外展示とあって太陽の日差しが魚たちの身体にキラキラと反射するのが美しい。また、給餌のパフォーマンスでは、魚たちが40cmぐらい飛び上がる豪快なシーンも見られるという。

アマゾン川の魚が見られる「きらめきの泉」

最近、ペットとしても人気を集めているカワウソにも新展示「カワウソたちの水辺」で出会える。草が茂る陸地や急流のような水辺を模した展示スペースでは、元気いっぱいに駆け回るキュートなコツメカワウソたちの姿が見られる。

カワウソを展示した「カワウソたちの水辺」

このほか、新しくなった屋上エリアは、夜になると幻想的にライトアップされるほか、新しいグッズやお土産の販売、併設カフェの新グルメも登場するなど、まだまだ楽しみ方は満載だ。

新展示を見れば、飼育スタッフたちの熱意が伝わってくる

今回、サンシャイン水族館を訪れ、展示の素晴らしさはもちろんのこと、それを支えるスタッフたちの熱意にも心を打たれた。

真摯に生き物たちと向き合うスタッフたち

取材時、中村さんが「例えばカワウソの展示では、動物たちが草を食べてしまうので、毎日のように草を植えなおさないといけないんです。企画の段階で、大変だから無理かなとスタッフたちに相談したところ、『毎日植えます!』と言ってくれたんですよ」と、笑顔で話していたのが印象的だった。

スタッフ全員が「仕事の大変さよりも、お客さまに何を見せたいか」を一心に考えて働いている。今、同館が世界中から賞賛される理由は、きっと"斬新な展示"というだけでなく、一つひとつが"働く人たちの想いがこもった展示"だからに違いない。