睡眠時間は疾病リスクと関係があるようだ

私たちは基本的に毎日睡眠をとる。人によっては8時間以上も寝ており、単純に人生の約3分の1を睡眠に充てている計算になる。私たちの脳を正常に働かせるために欠かせない睡眠だが、その時間が短いとさまざまな疾病のリスクを招く可能性があるようだ。

海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「睡眠不足と心臓疾患の関係」にまつわるコラムが掲載された。本稿ではその内容を紹介しよう。

最新の研究によると、睡眠不足は心臓疾患のリスクを高めるようだ。心臓疾患や糖尿病になるリスクファクターを持っている人の睡眠時間が6時間未満だった場合、そのようなリスクファクターを持っていない人よりも心臓疾患か脳卒中で死亡する確率が約2倍になるという。特に高血圧か糖代謝が悪い人にその傾向が強かった。これらの疾患のリスクファクターを持っていても、睡眠時間が長ければ死亡リスクは下がることも明らかになっている。

今回の研究は、心臓疾患になるリスクファクターを持っている人の死亡リスクに睡眠時間がどのような影響を与えるかを吟味した最初の研究だった。研究は睡眠ラボで睡眠時間を実際に測定。ラボで一晩眠ることに同意した無作為に選ばれた1,344人の成人が研究の対象者となった。参加者の平均年齢は49歳で、そのうち39.2%は少なくとも3つのリスクファクターを持つメタボ体形だったとのこと。平均で16.6年の追跡調査を行ったところ、参加者の22%が亡くなっていた。

リスクファクターを持っていない人と比較したところ、メタボ体形の参加者でラボで6時間以上眠っていた人は、追跡調査中に脳卒中で死亡する確率が1.49倍高かった。一方、メタボ体形の参加者でラボでの睡眠時間が6時間未満だった人は、心臓疾患か脳卒中で死亡する確率が2.1倍高かったとのこと。また、睡眠時間が短いメタボ体形の参加者は、メタボでない参加者と比較して、原因の如何に関わらず死亡率が1.99倍高かった。

この研究グループの主任であるペンシルベニア州立大学医学部のジュリオ・フェルナンデス-メンドーザ医師は「多くの心臓疾患リスクファクターを持っている人が心臓疾患や脳卒中での死亡リスクを減らしたいと思うのであれば、睡眠に気をつけ、睡眠不足であれば医師に相談してください」と語る。

今回の研究は観察研究なので、短い睡眠時間とメタボの人の死亡の間に因果関係があるという結論を導き出すことはできず、「単に関係があると言えるだけだ」と同医師は語る。

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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。