一人っ子、長子、中間子、末っ子……。人間を4類型に分けて分析することは難しいが、心理学の視点から、大きな傾向を読み解くことはできるそう。それぞれの子どもにはどんな特徴があり、子育てにおいてどのようなことに気をつけた方がいいのだろうか。
まずは、一人っ子の特徴や子育てについて、神奈川大学人間科学部教授で心理学者の杉山崇先生に話を聞いた。
一人っ子には"競争"ではなく"目標"を与えよう
一人っ子が育つ環境について、「兄弟・姉妹がいないので、自分が使いたい物を誰かに取られることはないし、自分の領土を侵される、何かに困る、という経験が家庭の中で少なくなりがち」と語る杉山先生。そのため、家庭から社会に出て、誰かと競わなければならない状況に置かれると、競争から逃げようとする傾向があるそうだ。
一方で、長所は自己肯定感が高いこと。明るく、気持ちが安定しているため、競争の場で発破をかけるというよりは、"目標"を持たせるといいという。「例えば憧れの人を見つけるなどして、日頃から目標を意識させるといいですね。目標というのは夢なので、夢が崩れるのは嫌ですよね。子どもは夢が持てれば、夢から大きく外れないように、自分を持っていこうとするので、それが成長の原動力になります」。
他者と比較するのではなく、その子に合わせた目標を提示していくことで、一人っ子の成長はサポートしやすくなるそうだ。
一人っ子だからといってわがままにはならない
また、「一人っ子だとわがままに育ってしまうのでは?」という心配をする親は多いだろう。しかし杉山先生は、「決してわがままにはなりません」と断言した。一人っ子というだけではわがままにはならず、親の育て方によるのだという。
「子どもが何歳になっても、親は自分の子どもに"ずっと子どものままでいてほしい"と思いがちです。一人っ子の場合、その思いが一身に注がれるわけなので、結果として親が子どもをいつまでも子ども扱いしてしまい、わがままに育ってしまう可能性はあります」。
子どもの夢や目標をうまく引き出し、競争での勝ち負けではなく、"目標に近づいている"という実感を持たせること。そして1人の人間として、自立した大人に成長してもらえるよう、親が意識すること。全ての子どもにあてはまるわけではないかもしれないが、一人っ子を育てる上で、大事にするといいかもしれない。
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杉山崇先生プロフィール
人を幸せにしたいという思いから心理学研究者の道に。神奈川大学人間科学部教授として教鞭をとる傍ら、臨床心理士の見地から心の悩みの相談を受ける。また、心理相談センター所長として後進の育成に従事している。一級コンサルティング技能士の資格を持ち、社員のメンタルヘルス対策を考える企業の相談にも対応。 著書に『読むだけで、人づきあいが上手くなる。』『グズほどなぜか忙しい!』他多数。近著『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』『ウルトラ不倫学』。講演、TV出演等で心理学の可能性を広げている。