女性版SASUKE『KUNOICHI』を積極販売
日本を代表する世界ヒット番組と言えば、『SASUKE』が必ずあがる。昨年はアメリカで『SASUKE』が放送開始してから10年というタイミングにあたり、世界で成功するプライム帯のエンターテイメント番組として大きく取り上げられ、昨年のMIPTVレポートで紹介した通りである。
今年もカンヌで、MIPTV開催直後にフランス版が収録され、現在、現地版の制作はイギリス、ドイツ、イタリア、オーストラリアなど17カ国に広がり、話題性に事欠かない中、今回のプレゼンでは、"女性版SASUKE"こと『KUNOICHI』が世界に売り出された。今年2月、8年ぶりに復活した『KUNOICHI』は、早くも6月に第2弾の収録が緑山スタジオで行われるところ。勢いに乗り、海外セールスも積極的に攻めていこうというわけだ。
発表後にイギリス在住の男性ジャーナリストに感想を求めると、「スポーツ系エンタテイメントと言えば『SASUKE』。日本にはいろいろなタイプのバラエティがあり、ユニークなものが多い。個人的には『風雲!たけし城』も好きです。だから今回の発表の中では『KUNOICHI』に注目です」というコメントを聞くことができた。
『おやすみ日本』に圧倒的支持
発表を見たバイヤーや番組プロデューサーらにインタビューした中で、圧倒的に支持を得たのがNHKの『おやすみ日本』だった。プレゼン中に会場から拍手と歓声が聞こえたほどだ。世界の番組上映が行われるカンヌの会場では、「文句なしに面白い!」と思われた時、わかりやすい反応で盛り上がる。つまり、『おやすみ日本』は、世界の番組関係者にとって高い支持を得たというわけだ。
この番組は、視聴者の眠れない声に耳を傾け、とことん付き合っていくというもので、宮藤官九郎とピース・又吉直樹の司会で、不定期に真夜中で生放送。プレゼンで、松雪泰子ら女優陣が「羊が1匹、羊が2匹…」と数える映像や「円周率は3.14 15926535…」と数字を読み上げるなど、視聴者を眠らせようとする仕掛けが紹介されると、そのシュールさに共感を得たのか、会場のあちこちで笑いが起こった。
データ放送やスマートフォンなどで、「眠いいね!」ボタンが押せるのも特徴で、これまで最多2016万回もの「眠いいね!」を視聴者から得たというインタラクティブ性も説明された。目標数が達成されるまで、眠れない声に耳を傾け、とことんつきあうという様子を映した全ての紹介映像が流れ終わると、会場は拍手喝采だった。
なぜ、こうした高評価を得たのか。番組プロデューサーでフォーマット番組の講師を務めるスペインのイザベル・デュラン氏に解説を求めると、「眠れない人のためにテレビが語り掛けるといったコンセプトは、これまでにない新しさがあります。テレビの役割さえも示してくれるものでした。こうしたやり方で視聴者のためにテレビができることがあるのかと、発見できました」という答えが返ってきた。
日本人のマジメすぎる性質と、定評のある発想力から生まれた番組が、海外でもウケそうな気配である。実際に番組を販売担当するNHKエンタープライズからは「プレゼン後に幅広い国・地域から引き合いを受け、商談を進めています」という話も聞けた。各社の熱意が実利にどのようにつながっていくのか、今後の動きに注目である。