前回の記事でお伝えした通り、ウェンディーズというブランドを手に入れたファーストキッチン(FK)は、今まさに反転攻勢の途上にある。コラボ店舗「ファーストキッチン・ウェンディーズ」の業績は、話題性も手伝い好調に推移。ファーストキッチンの紫関社長は、ウェンディーズとの合併で社内が変わりつつあるのを感じている。
まずはトップ集団を作る
紫関氏に話を聞いた中で、印象的だったのは「店舗や人材を強くしていきたい」(以下、かっこ内は紫関氏の発言)というフレーズだった。キーワードは主体性だ。
一人一人の社員をきちんと見て、評価していきたいと考える経営者は多くいるが、実際どのように実践されているのだろうか。現実問題として、各社員に社長の言葉や想いは伝わっているのだろうか。店長会議などの機会を活用したり、成績の良かった店舗を表彰するなどして、評価を伝達しているという風に、伝えたつもりになっている場合も多いような気がする。
紫関氏が実践したのはシンプルなことだ。月1回の頻度で発行する社内レターにおいて、優秀店舗を評価することと、成功した事例を共有することである。
チェーン店の事業を建て直す上で選択しがちなのは、業績の悪い店舗をハイライトし、不振の理由を洗い出したうえで、それをつぶしていくという、いわばボトム部分を引き上げる手法だ。しかし、FKの舵取りを任された紫関氏は違う考え方をする。
「まずは、トップ集団を作ろうよ」。FKを運営する上で紫関氏が目指すのは、自ら成功事例を積み重ねて走り続ける店舗、つまりトップ集団を創り上げることだ。そうすれば、成功事例をもとに追いかける店舗、つまりはフォロアーが自然と生まれてくる。
店舗で成功体験を積み重ねた人材には自信がつく。FKで成功体験を積んだスタッフは、ファーストキッチン・ウェンディーズを出店する際にリーダーを任せられるような人材に育つ。日本に乗り込んでくる外資系ファーストフードチェーンや新興勢力など、しっかりと市場に根を張っていない企業には、なかなかまねのできない仕組みだ。