新商品投入はベストタイミング?

グラン登場の一報を聞いて、「なぜ今頃?」と思った方もいるかもしれないが、このタイミングには実はしっかりとした根拠があり、客数の伸びを横目でにらみながらの新商品投入だったと想定される。

2016年のセールスレポートをよく見ると、1月と2月は前年同月比で客数が2桁の伸びを示しているが、3月以降は1桁台が続く。10月と12月は2桁台の伸びとなっているが、10月は「月見バーガー」、12月は「グラコロ」という大型季節商品を含んでの結果だった。つまり、季節商品がなければ、客数の伸びは見込めなかったかもしれないのだ。季節限定商品だけでは客数の回復、ひいては売上高の増加が困難な状態であったと強く意識させる数字だった。

来客数がある程度は見込める状態になった今こそ、売上高をきっちりと稼ぐための次の一手、つまりは単価アップが見込める高付加価値商品の投入が必要だった。客が戻ったタイミングで、マックは客単価を上げる戦略に打って出たというわけだ。

ハンバーガーだけで単価は稼げない。ビッグマックだけでは選択肢が限られる。繰り返しになるが、客数が見込める今だからこそ、マックは昨年のように失速するわけにはいかないと考え、客単価を上げる方向に進んだのではないだろうか。2017年3月に発売した期間限定商品「ギガベーコンてりたま」が好評を博したことにより、この勢いをつなげるために新商品を投入したという流れも背景にはあるだろう。

グラン投入で基幹商品を強化

グランはマックが1年前に発売した「クラブハウスバーガー」から発想して作った新商品だ。クラブハウスバーガーの発売後、マックは特製ビーフとバンズでボリューム感を詰め込んだ「ギガ ビッグマック」(期間・店舗限定)を発売したこともあるが、従来のパティを増量しただけの商品では、客単価を上げることは困難だ。ましてや季節商品や期間限定商品を定期的に投入するだけでは、全体の売り上げを維持・底上げすることは難しい。

グランにインスピレーションを与えた「クラブハウスバーガー」。この商品をもとにマックはグランを開発した

基幹商品がしっかりと売れていること、これが大前提だ。いわゆるベース商品が顧客の支持を得て、基本の売り上げを確保(担保)してこそ、戦略商品である季節商品の存在が光ってくるというわけである。

高価格帯商品を充実させるのであれば、取り扱う商品に見合った店舗を用意する必要がある。閉鎖とリニューアルが続いたマックの店舗戦略はどのような状況だろうか。