支払いがなくなる未来とは

――北欧は銀行に行ってもATMがない、銀行でさえも現金を扱わないというように、極端なキャッシュレス化が進んでいます。デビットカードはキャッシュレスの一例ですが、今後の日本のキャッシュレス像はどのようになるでしょうか?

みずほ銀行 辻氏「私は電子マネー信者なので、電子マネーの世界が広がってほしいですね。Kyashのリリースもありますが、いろんな企業が電子マネーを発行していくのではないかと思っています。競争が激化することでサービスを改善してさらに競い合い、10年後には3つぐらいの大きな電子マネーに収斂されるのではないでしょうか。その頃にはテクノロジーも進んでいるので、モノのなかにネットが入り込むIoTのように、『モノ』と『支払い』が完全に同期化・一体化していると思います。そうなると『Amazon Go』のようにレジが存在せず人が商品を手にとってそのまま出ていける、『支払い』という行為自体がなくなるのではないでしょうか」

三井住友銀行 田村氏「私も将来的には『支払いをしている』という感覚がない世界になると思います。しかし、いくら払ったかという情報を知るときや、誰かに気持ちを渡したいというときに、あえて一手間かけるようになるのではないでしょうか。不便なものが、人に気持ちを伝えるために入ってくると予想しています」

三菱東京UFJ銀行 藤井氏「去年からのトレンドで、『ネオバンク』『デジタルバンク』という、AIでユーザーの行動を分析しフィナンシャルヘルスを改善するサービスや、支出を裏でコントロールしてくれるサービスが欧米で増加しています。人はお金をコントロールしたいと思う気持ちが強いものです。今後はフィナンシャルヘルスの改善と決済がくっつき、金融的な面で人の役に立つような決済アプリがトレンドとしてくると思います」

Kyash 鷹取氏「人に対してお金を返したり渡したりするシーンがありますが、それにはカード払いが使えないという制約があります。5年後ぐらいにはそれがなくなり、対象問わずキャッシュレスの世界が実現しうるのではないでしょうか。10年後には個人の支払い認証が瞬時に行われ、立て替えや割り勘の概念自体がなくなる可能性もあると思います」