ニトリに女子高生がきた!

――客層に違いはありますか?
郊外の店舗は20代後半~50代くらいのお客さまが多いですね。都心の場合は、お店にもよるんですが、郊外ではあまり見られない10代のお客さまもいらっしゃるのが印象的でした。ニトリで制服を着た女子高生を見る日がくるとは思わなかったです(笑)。

女子高生も遊びにくるニトリ。以前は考えられなかったそうだ

都心の店舗の設計思想として、「車がない人でも行きやすい店」という考え方があるんです。たとえば、郊外の店舗には息子夫婦の買い物のついでに連れて行ってもらっていたようなご年配の方が、病院の帰りにふらっと立ち寄れるとか。まだ免許を持っていない10代のお客さまも、学校の帰りに立ち寄れるような店ですね。そうやって、お客さまがニトリに近づいてくださるのではなく、ニトリがお客さまに近づいていきたいなと。

競合店はむしろウェルカム

――都心の場合は競合店も多くなりそうですが、その辺はいかがでしょう
中目黒なんか、オシャレな家具屋さんが多いですよね。ただ、価格帯がニトリとは全然違うんですよ。職人さんが手作りされたデザイナー家具なんかを扱っているお店が中目黒では多いんですけど。うちはそういうのじゃないので(笑)。

――新宿のタイムズスクエアでも、すぐ隣に日用雑貨や家具を扱う大型店舗がありますよね
そうですね。ただ、私たちとしては、近くにたくさんお店があっても、お客さまからしたら両方回れて悩めるから便利だよね、という考え方をしています。いろんなお店を回って買い物をしたい人が集まってくることで、結果的にニトリの商品が売れれば問題ないよね、と。

――なるほど。商品に自信があるからこその考え方のように思えます
そうですね。負ける気はありません(笑)。

「価格」も「品質」も強み

――ニトリの商品の強みはなんでしょうか?
以前は「価格」でした。今も変わらず強みではありますが、最近は少し高めの価格の商品も増えています。

――ということは、品質も強みになりつつある?
はい。品質も自信をもって打ち出しています。経済産業省が行っている「製品安全対策優良企業表彰」という表彰があるんですが、ニトリは流通小売業として初めて「経済産業大臣賞」という最上位の賞を頂いたんです。

魅力的な価格のニトリの商品。その品質も強みだという(写真は赤羽店)

――すごい。具体的にはどんな安全対策を施しているのですか
新商品を売り出すにあたって、まず商品のサンプルが社内で上がってきます。そのサンプルを、一度完全にバラバラに分解するんです。「全バラ検証」っていうんですけど。

――全バラ検証!
パーツの空洞などを1つひとつ確かめて、製品の脆い部分を見つけ出すんです。それと並行して、「意地悪テスト」も行います。

――さっきからネーミングが秀逸ですね
「意地悪テスト」では、「お客さまがこんな使い方をしてしまうかもしれない」という仮定のもと、思いもよらないような負荷をかけて耐久性を確かめるんです。パーツを逆側に曲げてみたりとか。

それらの検証の後に、耐久検査を行います。例えば、ソファは10万回座っても大丈夫かを確かめるために、機械を使って人間が座る負荷を10万回かけています。

――経済産業大臣賞も納得の検査ですね
ありがとうございます。受賞を示すカードもありますよ! 社内には横断幕もありますが……、撮りますか?

――それは大丈夫です

カードは撮らせてもらいました

目標は「2022年までに1,000店舗」

――最後に、今後についてお聞きできればと思います。これからも都心店舗をどんどん増やしていくのでしょうか
そうですね。……でも、お店としては都心にも大体出店できてきたかな、という感じです。山手線の内側に限定するとまだちょっと少ないんですけどね。

全体的な話で言うと、今は国内外に約470店舗を展開しているんですが、2022年までに1,000店舗の出店を目指しています。

――1,000店舗ですか! どこに住んでいても"最寄りのニトリ"がある時代になりそうですね
そうなるように、私たちもがんばります。

――ありがとうございました


ニトリの"都会っ子"化は筆者の気のせいではなく、品質が高くオシャレな商品も増えたニトリによるイメージ戦略だった。都心店舗では限られたスペースを有効に活用しつつ、商品の比率を変えてオシャレな雰囲気を演出しているのだ。

当初は売り上げを重要視していなかったようだが、ニトリの商品は都心部での需要も高く、現在では単なるイメージ戦略にとどまらない効果を発揮しているようだ。ハイブランドを着こなすファッショニスタがファストファッションのアイテムを取り入れて楽しむように、高級家具店が並ぶエリアでもその安定した品質とリーズナブルな価格で競争力を発揮できるのがニトリの強みなのかもしれない。