家具も雑貨も日用品も、生活に必要な物は大体なんでもそろってしまう店、ニトリ。しかも価格も手頃という庶民の味方だ。

ニトリが都会っ子になった気がする

そんなニトリ、なんだか最近都会っ子になっていないか?

かつてニトリといえば、郊外の国道沿いに大型店舗があって、布団カバーを新調しに訪れたのに買う予定のなかったコップとかカラーボックスとかをついつい買ってしまい車のトランクが埋め尽くされるという、IKEAやコストコに似た買い物スタイルの店だった気がする。

しかし、2016年9月16日には中目黒にニトリの路面店がオープン。同年12月1日(筆者の誕生日だ)には新宿タカシマヤタイムズスクエア(以下、タイムズスクエア)に出店し、2017年の6月には渋谷の公園通りにも大型店舗がオープンする予定だという。急に垢抜けた。どうしたんだ、ニトリ。好きな子でもできたのだろうか。

タイムズスクエアのニトリ

近ごろ急に増えてきた都心の店舗と、グッドオールドな郊外の大型店舗。客層や売っている商品、そもそもの運営方針に違いはあるのだろうか。そんな疑問をニトリホールディングスの広報さんにぶつけてみた。

通販利用の4割が東京からだった

――ニトリ、最近急に都会っ子になっていますが、何があったのでしょうか
ニトリの通販で商品を買ってくださるお客さまの統計を取ったところ、約4割が東京都のお客さまだったんです。その結果を受けて、まだ私たちは都心部のお客さまに商品のアピールをする余地があるんだね、と。それで、都心部にもどんどんお店を増やしているところです。

――なるほど。手応えはどうでしょうか
実は出店を開始した当初は、都心部のお店は"売れるお店"じゃなくてもいいと思っていたんです。ブランディング戦略の1つとして、「ニトリってこんなにオシャレになったんだ」というイメージを広められればいいなと。

しかし、実際には目標の2倍の売り上げ実績が出る店舗もあって、「ニトリはこんなに都心のお客さまに求められていたんだ」と。逆に、「今まで出していたお店はそれほど遠い存在だったんだな」ということにも気付かされるいい機会になりました。

例えば、マロニエゲート銀座の店舗は、3月15日に2フロア営業の店舗にリニューアルしたのですが、元々はワンフロアの限られたスペースでの出店だったんです。しかし、売り上げが非常に好調だったので、「売り場面積を2倍にしよう」と増床を実施しました。

こんな風に、結果が出れば売り場面積もどんどん増やしていきたいですね。

――いつか、銀座の真ん中にでっかいニトリビルができるかもしれないわけですね
そんな日が来たら楽しいですね(笑)。

都心は日用品少なめ&中価格帯

――やっぱり、都心の店舗は郊外の店舗より小さめになりますよね
そうですね。賃料も高いので、広いスペースに最初から大型店舗をドンと出す、という戦略は考えていません。ただ、マロニエゲート銀座の店舗のように、どんどん大きくなっていくケースはあり得ます。

それから、都心部はいわゆる"居抜き"の出店が多いので、やや手狭な店舗が多くなるという事情もありますね。

タイムズスクエアの店舗も、かつて書店だったスペースの居抜きだ

――必然的に、商品点数も都心では絞らざるを得なくなると思います。ラインアップはどのように変えているのでしょうか
大型店舗では、日用品から装飾品まで約1万~1万2,000点のアイテムを置いています。対して都心の店舗では、日用品を少し減らして装飾品を多めのラインアップにしています。また、価格帯も"低価格路線"というよりは当社基準での"中価格帯"の商品を増やしています。

――日用品というと、調理器具とかですか
いえ、調理器具は割とどのお店にも置いています。ニトリのお客さまは女性が多いんですけど、女性の需要がキッチン用品は特に高いんです。

日用品というのは、例えば洗濯ハンガーのような商品ですね。一例では、郊外の店舗では20種類くらいあるものを、都心の店舗では半分の10種類程度に絞っています。

郊外の店舗には日用品もずらり(写真は赤羽店)

――なるほど。実際、日用品よりも装飾品の方がよく売れるのですか
それが、点数を削ってはいるんですが、中目黒店でも意外に洗濯用品などが売れるんです! 日用品を買える店がこの辺には少なかったんだ、という気づきになりました。

商品ラインアップを変えているのは、先程も言ったようにイメージ戦略の側面が強いです。内装やレイアウトも都心の店舗は全然違うんですよ。

内装が全然違う!?

――どのように違うのでしょうか
まず郊外の大型店舗ですが、床がアイボリーのタイルで、ライトは蛍光灯の白い明かりですよね。

郊外の店舗はこんな感じ(写真は赤羽店)

――ホームセンターみたいな雰囲気ですね
で、これが新宿タカシマヤタイムズスクエア店の写真です。床の材質はウッド調で、壁も一部をタイルに。天井のライトもダウンライトにして、よりオシャレに見える店舗にしています。

都心店舗はこう。オシャレ!(写真は新宿タカシマヤタイムズスクエア店)

――ほんとだ! 全然違う
他にも大きく変わっているんですが、気づきますか? 私は初めて見た時「おー」と思ったんですけど。

――さっぱりわかりません
陳列棚の上に置いている在庫を一掃してるんです。ほら、大型店では棚の上に商品が積まれてますけど、都心の店舗ではスッキリしているでしょう。

こちらは赤羽店の様子。棚の上に在庫がたっぷり積まれている

これが中目黒店の陳列。都心の店舗ではスッキリオシャレに!

――ほんとだ!!
ただこれだけのことで、お店の奥行きを見渡せて開放感も出て、オシャレに見えるんです。お客さまの中には、大型店特有のあの陳列が好きだという方もいらっしゃるんですが……。都心ではオシャレさをアップさせるために削りました。

――オシャレは引き算ですもんね!
足している部分もありますよ。都心の店舗では、商品のプレゼンテーションを増やしています。

――プレゼンテーションとは?
お店の壁や天井を使って、商品のオシャレな使用例を飾っているんです。棚の高さを低くしたことで空間を多く活用できるようになったので、お客さまが見て楽しめるような仕掛けを作るようにしています。

新宿タカシマヤタイムズスクエア店のプレゼンテーション

中目黒店のプレゼンテーション

――比べてみると、本当に大きく違いますね
そうですね。私達も初めて見たときはビックリしました。社員がビックリするくらい違うんです(笑)。お客さまからもそういったお声をいただいて嬉しく思っています。