具合が悪くても、具体的な症状を訴えることができない赤ちゃんは、パパ・ママが十分に注意していても、体の不調を見過ごしがち。そんな状態のひとつに貧血があります。特に離乳食を始めたばかりの赤ちゃんは貧血になりやすいと言われていて、放置しておくと体に悪影響を及ぼしかねません。
今回は、見落としがちな赤ちゃんの貧血について、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
Q.なぜ赤ちゃんは貧血になるのですか?
赤ちゃんの体の中には、母親の胎内でもらった「貯蔵鉄」というものがあります。生後6カ月頃までは、その鉄分を消費しているのですが、貯蔵鉄が底をつき始めた時に、鉄分を補うことができないと、貧血になってしまいます。そのため、離乳期と言われる生後6カ月~1歳前後は、貧血になりやすいと言われています。
また体の急激な発育によって血液が薄くなってしまい、鉄分の補給が間に合わないというケースもあります。
Q.赤ちゃんが貧血かどうか見極めるポイントは?
注意していても、貧血かどうか見極めるのは非常に難しいことが多いです。しかし、赤ちゃんに活気がなかったり、母乳を吸う力が弱かったり、顔色が悪かったりした場合、貧血の可能性も考えられるでしょう。また、普段は赤くなっている下まぶたの裏側が白っぽい、爪が白っぽいなどの症状も、貧血の影響である可能性があります。
Q.貧血かもしれないと思った時には、どうすればいいですか?
まずは食事から、鉄分をとるようにしてみてください。貯蔵鉄が減少し始める生後6~8カ月からは、赤身の魚や肉、レバーや大豆、それにひじき、のり、ほうれん草、小松菜など、鉄分を多く含む食材を意識的に離乳食に取り入れましょう。それでも症状が改善しなければ、小児科を受診してください。
血液検査で貧血と診断された場合には、処方される鉄剤を服用することで、徐々に改善されることが多いです。
Q.貧血のままでいると、体にどのような影響がありますか?
貧血を放置して鉄不足の状態が長く続くと、免疫や神経の発達にも影響を与えるおそれがあることが、最近になって分かってきています。また、なんとなく疲れやすかったり、動機を感じたりといった諸症状も出てくるでしょう。鉄不足で体に良いことは何も無いので、早めに対処をすることが大切です。
Q.離乳食を食べてくれず、鉄分の摂取が難しい場合にはどうすればいいですか?
粉ミルクを飲ませている場合は、鉄分が多く含まれているフォローアップミルクに切り替えてみてもいいかもしれません。
また母乳育児の場合は、ママ自身も食事やサプリメントなどで鉄分をとる工夫をしてみてください。母乳は粉ミルクに比べて鉄分が少ない上、生後半年以降は栄養分も少なくなっていくと言われています。親子で貧血にならないよう、できる限りの努力をしてみましょう。
※未就学児童の症状を対象にしています
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竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。