退職ママ、時短ママ、共働きパパが感じた"小1の壁"とは?

小学校の入学シーズンに、心浮き立つ春が近づいてきた。しかし、共働きのパパ・ママたちの前には、大きな壁が立ちはだかっている。いわゆる"小1の壁"だ。

子どもが小学校に上がり、保育園の延長保育が使えなくなったり、PTA活動など学校生活への関わりが増えたりすることで、親の仕事の継続が難しくなるケースなどを指す。

今回は、東京都江戸川区で、働きながら子育てをしている保護者が作るネットワーク「えどがわ学童保育フォーラム」のメンバー3人に集まっていただき、座談会を開催。それぞれが感じた「小1の壁」について、語ってもらった。

座談会の参加者

Aさん
小学2年生の男の子、年少の女の子を育てる2人の子どものママ。自身は時短勤務、夫はフルタイム勤務で働いている。
Bさん
小学3年生の女の子を育てるママ。子どもの小学校入学のタイミングで転職し、今は17時終業の会社で働いている。
Cさん
小学2年生の女の子、年中の男の子を育てるパパ。自身はフルタイム勤務、奥さまはフレックス制度を使って働いている。

まずは「4月1日」が大きな壁だった

――小学校入学に際し、みなさんはどんな準備をされていましたか

Cさん: まず、4月1日をどのように乗り切るかを考えました。保育園には3月31日までしか子どもを預けられません。4月初旬の入学式を前に、4月1日から学童に通わなければならないので、環境の変化に、娘が耐えられるか心配で……。学童に同じ保育園の友達がおらず、緩和策という意味もあり、初めは娘の友達が通っている民間の学童クラブに入れました。その後も週3回、民間の学童に通わせて、徐々に学校の環境に慣れさせるようにしましたね。


Aさん: うちの子は、学童に知っている友達がいたので、その点については小1の壁を感じませんでした。息子の保育園のお迎えの帰りに、通う予定の学童を見学に行って、子どもに「春からここに行くんだよ、おもちゃがたくさんあって楽しそうだね」と言い聞かせ、期待を持たせるようにしていました。自分が不安に感じていることは先生に質問するとか、年長さんの時期にだいぶ準備はしましたね。


Bさん: 私の場合は、娘が小学校に上がる前年の暮れに、勤めていた会社を退職して、入学準備を進めました。


――同じ会社で働き続けるという選択肢はなかったですか?

Bさん: 娘が少し内気な子なので、1人での登下校や登校準備など、何もかもが初めてという状況には、サポートが必要だと思いました。時短勤務をしたとしても、自宅から職場までが遠いので早く帰宅することができないし、自宅の近くには民間学童もありません。ベビーシッターも高額すぎて雇うのは難しかったので、やむを得なかったですね。

もっと早くから準備できればよかったのですが、当時、責任ある仕事を持っていたので余裕がなくて、気づいたら小学校入学……という状況でした。娘が学校生活に慣れた1年生の夏に転職し、今は別の会社で働いています。


お子さんの性格、勤務場所や子育て制度、職場の空気などで、働き方の選択は変わる

フルタイム勤務、時短勤務、フレックス勤務のもやもや

Cさん: 学童クラブの預かり時間は18時まで(※江戸川区の場合)。保育園の場合は延長保育があると、19時半まで延長できるので、「18時」とされると困る人は絶対に多いですよね。


Aさん: その1時間半が大きいんですよね。


Cさん: しかし、子育てにあまり関わっていない上司だと、小学校に上がるにつれて、子育てはだんだん楽になるだろうと思っている人もいるので、「子育てが大変だオーラ」を出すようにしています。職場で共有しているスケジュールにも、休む理由としてわざと子どもの予定を書くなど、工夫していると妻も話していました。


Aさん: 私もお知らせが来たら、まず職場で、大きめの声で「学級閉鎖だ……」と(笑)。「どうしたの?」と声をかけられると、そこから仕事の調整をどうつけるか、打ち合わせしやすいです。


Cさん: 学級閉鎖でどんな大変なことが起こるのか、理解されていない方もいますけどね(汗)。


――Aさんは、お子さんが保育園に通われている頃から、時短勤務ですか?

Aさん: そうですね。自分も時短の働き方に慣れていますし、周りもそれにあわせて仕事を振ってくれるようになったので、働きやすくはなっています。息子も成長し、生活リズムも落ち着いているので、今は早めに出勤したり、少し遅めに仕事したりして、フルタイム勤務ができるようになってきました。コアタイムのあるフレックス勤務の状態です。

ただ、ずっと昇格は止まっています。長い時間働いている方、私の代わりに仕事をしてくれている後輩が先に出世することについては納得していますが、私はこのまま年を取ってどうなっていくのだろう……と考えてしまうことはありますね。転職して、違うステージで働くことも想像しますが、今はまずここの経験で技能をつけようと、とりあえず積み重ねて今に至っています。


Bさん: 前の会社で働いている時に、20時まで子どもを保育園に預けて、1年間フルタイム勤務で仕事をしてみたのですが、結果として子どもにしわ寄せがいってしまいました。おねしょをしてしまったり、夜ご飯も寝る時間も遅くなったり……。私の場合は、子どもの負担が大きすぎると感じました。

転職して、これまでキャリアで築いてきたスキルを生かせる機会は少なくなってしまいましたが、職場が17時終業で、自宅から近いので助かっています。


鍵を渡すか、渡さないか問題

――長期休みをどう乗り切るかも、お悩みが多いと聞きます。

Bさん: 長期休み中、学童クラブのスタートは9時なのですが、娘を送り出す時間に家にいたら、出勤時間に間に合わないので、最初は苦労しました。子どもに鍵を持たせて、1人で登校させればいいと思いがちですが、小学1年生の娘にとっては、家の鍵を閉めるのが、とても難しいことでした。鍵穴にうまく鍵を入れられないし、入れられてもうまく回せません。ですから、一緒に自宅を出て私が鍵を閉め、「学童クラブまで、とぼとぼゆっくり歩きなさい」と言い聞かせています。


Aさん: 私の場合、自宅が内廊下のマンションなので、私が施錠して出勤してから、子どもがクラブに行くまでの時間は、内廊下にいるように言い聞かせていましたね。


鍵をいつ渡すのか、いつから1人で登下校させるのかは、悩みの種のようだ

――今ではお子さんに鍵を渡しているのですか?

Cさん: いまだに渡していないですね。長期休暇中に限らず、1人で帰宅させるのがいいかどうかは、治安を考えると、判断に迷うところですね。


Bさん: 娘には小学3年生の夏休み明けから鍵を持たせています。でも1人で帰宅させるときには、「後ろに誰もいないか確認して家に入りなさい」と伝えています。GPSでどこにいるか把握できるように、携帯電話も持たせています。


Aさん: 息子の通っている学校は大規模校ということもあり、7~8人でぞろぞろと帰宅するので、その点は安心ですね。鍵は1年生から持たせていますが、大きなトラブルはありません。週に1回はファミリーサポートの方に送りを依頼して、習い事にも通わせています。


Cさん: 今は送迎のついた習い事も多いですよね。習い事を学童代わりにしている人もけっこういますよね。


Aさん: 習い事に行くと、いつもと違う友達がいて、いつもと違う自分でいられるので、いろんな居場所ができるのはいいことだなと思います。


毎日会わないからこそ、学童の先生とコミュニケーションを

――学童で生活するお子さんたちの様子はいかがですか?

Cさん: うちの娘は、鉄棒ばっかりやっていますね、鉄棒部かというくらい(笑)。たまにですが、学童の先生に様子を聞いているので、信頼関係ができていますし、根本的な心配事はありません。


Bさん: ちょっとした友人間のトラブルはあるようですが、学童の先生にうまく仲裁に入っていただいて、ありがたいなと思っています。自分で紙に絵を描いて、おままごとセットを作ったり、1年生の子たちと遊んだり、学年の垣根を越えて楽しんでいるようです。


――学童の先生は、けっこう子どものことを考えてくれているんですね。

Bさん: 例えば、娘の体調が少し悪いときでも、「寒いと言っています」とか、細かい状況を連絡してくださるのは助かりますね。自分でも気になることは、先生が出勤されるタイミングにあわせて、電話を入れておくと、気にかけてくれるようです。


Aさん: 保育園の時と違って、先生に毎日会うことがないので、コミュニケーションを取ることは大事だと思います。相手も人間ですし、やっぱり一言あった方が、気にかけてはくれやすいのかなと。こちらも納得して預けられます。


次回は、PTA活動や学校行事への参加、それに子どもの宿題のフォローなど、小学校に入学してから、親として初めて体験した出来事について、お話しいただきます。

※画像はイメージで本文とは関係ありません

えどがわ学童保育フォーラム

東京都江戸川区で働きながら子育てをしている保護者のネットワーク。2012年、すくすくスクール学童クラブの「補食」(おやつ)が廃止された際、「おやつのない学童はありえない」と廃止反対を訴えるべく発足。その後も江戸川区に根強い働きかけを行い続け、2016年4月、希望する保護者による持参という形ではあるものの、「補食」(おやつ)を復活させた。江戸川区の働く親が、仕事を続けながら安心して子育てができるように、そして全ての子どもたちが、学校が終了して家に帰るまでの時間を、心身ともに豊かに実り多く過ごせるように、活動を続けている。