仁和寺 - 遅咲きの桜の名所

多くの場所で3月下旬から4月上旬頃にかけて桜が満開を迎える中で、それより10日前後遅くに見頃を迎えるのが、仁和寺の「御室(おむろ)桜」だ。樹高2~3mの背の低い八重の桜が密集して咲き、木々の間に遊歩道が整備されているので、間近で花を見ることができ、香りもとても良い。

一般的な桜より背が低い仁和寺の御室(おむろ)桜(2016年4月10日撮影)

ちなみに、「御室」というのは仁和寺を含む、この付近一帯の地名で、宇多天皇(在位: 887~897年)が退位後、仁和寺に僧房を意味する「室(むろ)」を設けて住まわれ、それに「御」をつけて尊称したのが始まりという。なぜ、御室桜が背が低いのかについては、土壌の性質によるものではないかと言われるが、詳しくは現在も調査しているとのことだ。

仁和寺五重塔と御室桜(2016年4月10日撮影)

●information
仁和寺
住所: 京都府京都市右京区御室大内33 アクセス: 京福電鉄北野線「御室仁和寺駅」下車、徒歩3分

円山公園 - 京都の夜桜の名所と言えばココ!

さて、花見で欠かせないのが、夜桜見物だ。上述した平野神社でも夜桜を楽しむことができるが、祇園の花街に隣接する円山公園で見る夜桜は、心なしか艶(あで)やかに見えるから不思議だ。

円山公園内の坂本龍馬と中岡慎太郎の銅像と桜。龍馬と慎太郎の墓は公園からほど近い、京都霊山護国神社にある(2010年4月2日撮影)

円山公園は、広さおよそ8万6,000平方メートルにも及ぶ都市公園で、池を中心とする和風回遊式庭園を模した造りになっている。園内に植えられた桜の本数は、公園管理事務所も正確な数を把握していないとのことだが、700~800本くらいの桜があるのではないか。

園内の数多くの桜の中でも一際目立つのが、中央の池の付近に植えられた、「祇園枝垂桜」または「祇園の夜桜」と呼ばれる枝垂れ桜の大樹。この桜の木は、昭和22(1947)年に枯死した、初代「祇園枝垂桜」の跡を継ぐ2代目。昭和3(1928)年頃に初代の桜から種子を採って育てたもので、昭和24(1949)年に現在の場所に植栽されたというから、既に樹齢80年以上だが、まだまだ毎年元気に花を咲かせている。

ライトアップされた「祇園枝垂桜」(2016年3月29日撮影)

なお、桜咲く祇園の華やかで少し妖艶な雰囲気を、明治から昭和の初めにかけて活躍した歌人の与謝野晶子は、「清水へ祇園をよぎる桜月夜 今宵遭ふ人みな美しき」と和歌に詠んでいる。

●information
円山公園
住所: 京都府京都市東山区円山町
アクセス: 京都市バス「祇園」下車、徒歩3分

岡崎疏水 - 舟めぐりをしながら楽しむ夜桜

最後に紹介するのは、桜の名所、岡崎公園のライトアップされた夜桜を「十石舟」と呼ばれる遊覧船の上から眺めるプランだ。

十石舟から眺めるライトアップされた桜(2016年3月31日撮影)

「南禅寺舟溜り乗船場」を出航した十石舟は、夷川ダムまでの往復約3kmのコースをおよそ25分かけて周遊する。十石舟は、3月下旬から5月のゴールデンウィークの頃まで運航されているので、桜・新緑を楽しむことができるが、夜間運航は桜の時期限定だ。

岡崎疏水を行く十石舟(2016年3月31日撮影)

●information
岡崎さくら・わかば回廊ライトアップ&十石舟めぐり
実施期間: 2017年3月25日~5月7日。桜ライトアップと十石舟夜間運航は4月9日まで
アクセス: 乗船場へは地下鉄東西線「蹴上駅」下車、徒歩7分
予約方法: WEB予約(クレジットカード決済)。当日券は、乗船当日の朝から乗船場で販売


京都の桜の名所巡り、いかがだっただろうか。本稿で紹介したほか、清水寺、平安神宮、嵐山など、京都の桜の名所を挙げれば枚挙に暇がない。それぞれのスポットの見頃の時期や、ライトアップの有無などから、上手に花見プランを組み立ててほしい。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。