第10回「WOWOWシナリオ大賞」授賞式が10日、東京・赤坂のWOWOW本社で行われ、舘澤史岳さんの『食い逃げキラー』が大賞に選ばれた。

左から、WOWOWの田中晃社長、高島麻利央さん、舘澤史岳さん、新井まさみさん、崔洋一監督

2007年に創設された同アワードは、プロ・アマ問わず優れたシナリオ作品を発掘し、脚本家の育成を通じて広く映像文化の発展に寄与するというもの。今年、応募総数455作品の中から大賞に選ばれた『食い逃げキラー』は、貧しい生い立ちの中、食い逃げをきっかけに走る才能を開花させた異端のスプリンター・染谷省吾が、大学在学中に日本一に輝くが「早ければ何でも許される」という身勝手な考え方から問題行動を繰り返し、挙句の果てに事故を起こしてスプリンターとしての未来を自ら断ってしまう。そんな生吾が、ひょんなことから国気に悩まされるファミレスで『食い逃げキラー』として働くことになる。というストーリー。

同作を執筆した想いを聞かれた舘澤さんは「3年前、曙橋でご飯を食べているときに実際に目の前で食い逃げをした人がいまして、スタッフさんが驚いたので、僕は当然追いかけるものだと思ったら、スタッフさんが『まあいった。やられちゃった』と諦めていて。それにガッカリしちゃって、食い逃げを見たワクワクやドキドキと、追いかけないというガッカリという、モヤモヤ感を抱えていたのがきっかけです」と執筆に至った経緯を明かし、「採算度外視で追いかけてほしかったという思いって、僕以外の人にとっても同じものなんじゃないかなと、スカッとするものがあるんじゃないかなと思って、そこから食い逃げを追いかけるというドラマを作ろうと思って3年がかりで作りました」とコメント。「自分1人が面白いと思って作っていたものが、こんな形で大勢の方に評価してもらえて嬉しいです」と喜びを語った。

また、大賞の副賞として賞金500万円獲得し、さらに2017年度中の映像化を約束された舘澤さんは「実は第5回のときに最終選考の1人に選ばれているんですけど、第5回だけ対象がなしで映像化されず、(最終選考に)残ったのに誰も(大賞に)選ばれていないって全然ダメだなと思っていたので、絶対に取りたいと思っていました。忘れ物を取りに来たじゃないですけど、すごくうれしいです」と声を弾ませた。

選考委員長を務めた映画監督の崔洋一は「名実ともに読ませるシナリオで、独特のテンポとスピード感はアホな青春とニヒルな心持ちの主人公の移ろう物語。極めてアナログな人間関係がクスリとくるユーモアもある」と評価した。

このほか、優秀賞に新井まさみさんの『洛中洛外ソロウェディング』、高島麻利央さんの『のぼる』がそれぞれ選ばれた。また、来年から同アワードは『WOWOW新人シナリオ大賞』と改め、年齢40歳以下を対象に、優れたシナリオ作品を発掘し、新人脚本家の育成を通じて広く映像文化の発展に貢献することと、その映像化を目的に行われる。