株式市場に、「トリプル・ウィッチング(3人の魔女)」という言葉がある。主に米国市場で、株式先物、株価指数オプション、個別株オプションの3つの取引満了日(いわゆるSQ)が重なる日のことだ。時に相場変動が大きくなることで知られている。

国際金融市場で、これに相当すると言っても過言ではない日がやってくる。3月15日だ。 この日、米FRB(連邦準備制度理事会)がFOMC(公開市場委員会)を開いて金融政策を決定する。そして、米連邦債務の上限を設定したデットシーリングを無効にする措置がこの日をもって終了し、翌日からデットシーリングが復活する。さらに、オランダで総選挙が実施され、翌日にかけて開票結果が明らかになる。

いずれも、市場に大きな影響を与える可能性を秘めているので、詳しく見ておきたい。以下の( )はいずれも日本時間。

FRBの次の利上げは早くても6月というのが一時有力だった見方だ。しかし、この1-2週間、FOMC参加者、それもイエレン議長を含めて利上げに慎重な「ハト派」から利上げに前向きな発言が相次いだため、3月の利上げがほぼ確実視されている(10日発表の2月雇用統計を受けて、FOMCに対する市場の見方が変わる可能性はある)。

したがって、現地15日の午後1時(16日午前3時)ごろに出る結果が「利上げ」だけならば、市場は反応しないか、あるいは「材料出尽くし」で、米ドルの下落や米金利の低下を招くかもしれない。一方で、FOMCやイエレン議長の会見から次回以降の利上げのタイミングやペースを前倒しするようなシグナルが出てくれば、米ドル高、米金利上昇となりそうだ。

そして、オランダ総選挙の投票が現地午後9時(16日午前5時)に締め切られ、直後から出口調査の結果や開票結果が徐々に明らかになる。

ウィルダース氏の率いる極右の自由党(PVV)が第一党に躍り出るとの予想もある。ただ、PVVの獲得議席数は全150議席の過半数に到底及ばないと見込まれる。また、PVVと連立を組もうとする政党も見当たらないため、PVVが政権を担う可能性は限りなくゼロに近いとされる。

それでも、PVVが事前予想を上回る議席を獲得するようであれば、フランス大統領選挙(4~5月実施)で同じく極右の国民戦線(FN)のルペン氏が健闘するとの観測につながるだろう。ルペン氏はユーロ離脱を掲げており、その懸念が強まればユーロ通貨の悪材料となる可能性が高い。

米国では3月16日午前0時(16日午後2時)をもって、デットシーリング(債務上限)が復活する。そうなれば、米政府はそれ以上に債務を増やすことができなくなる。

即座に不都合が生じるわけではないし、財務省は「奥の手」を使ってある程度は債務を増やす余地を捻り出すことも可能だ。しかし、そのままではいずれ限界がやってくる。米国債の利払い(=新たな債務)ができない可能性、つまりデフォルト(債務不履行)の可能性が少しでも意識されれば、金融市場は動揺するかもしれない。

共和党が政権と議会を握っている「統一された政府」においては、デットシーリング問題を長引かせるメリットは小さい。危機が発生すれば、共和党がその責めを負うことになるからだ。ただ、共和党内の財政保守派がトランプ政権の拡張的な財政政策をけん制するために、デットシーリングを「人質」に取る可能性は否定できない。

3月15日、市場は重要イベントを「無風」で通過するだろうか。それとも、1つないし複数の「嵐」に遭遇するだろうか。3つの嵐が重なって「パーフェクト・ストーム」が発生する事態は避けてもらいたいものだ。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。

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