後任の西川氏はコストダウンで力を発揮

ゴーン日産社長の後任は、西川(さいかわ)廣人共同CEOだ。2017年4月に就任する。ゴーン氏62歳、西川氏63歳と同年代の後継となるが、西川氏は購買畑でルノー/日産連合における共同調達によるコストダウンに力を発揮し、頭角を現した人だ。ゴーン氏の信頼も厚く、日産代表として日本自動車工業会会長に送り込んだ時の肩書きは副会長兼CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)だった。

ゴーン氏からの信頼も厚い次期社長の西川氏

また2015年秋には、ルノー・日産へのフランス政府の干渉が強まる中で交渉役も務めた。同年暮れに西川氏がパリからテレビ記者会見し、「日産、ルノー、フランス政府が日産の経営の自主性を担保し、アライアンスの将来を守ることで合意した」ことを発表した。

当時の西川氏は、これを受けて「ルノーと日産の信頼関係は、ゴーンCEOの力強いリーダーシップで築き上げられたことは言うまでもありませんが、さらに将来に向けて一歩前進したとも言えるでしょう」との声明を発表した。さらにこの合意の意義について、「ゴーンCEOが退任しても十分仕事ができる関係を築いた」と語っている。この頃からゴーン氏は、西川氏に社長を譲る覚悟を決めていたのだろう。

ルノー/日産連合が、1990年代末から2000年代初頭に起きた世界の自動車メーカー間の合従連衡において、アライアンスの成果を上げたモデルケースとなったことは確かだ。瀕死の状態にあった日産がルノーの援助(カネ、ヒト)によって再生し、一方で再生後の日産は、ルノーの持ち分法適用会社としてルノーに持ち分利益を上納することで、ルノーの業績を支えているという関係にある。

ただ、現在のルノーと日産は株式を持ち合う関係にあるものの、ルノーの日産への出資比率が43.4%であるのに対し、日産のルノーへの出資比率は15%で、かつ日産の持つルノー株には議決権がない。日産はルノーの了解なしにルノー株の売買ができないなど、資本面では不平等な提携関係にあったのだ。

アライアンスの成功例となったルノー/日産連合だが、互いの出資比率には大きな差がある

新中計で問われる日産の真価

日産が進める中期経営計画「日産パワー88」は2017年3月末で終了する。世界販売の市場占有率(シェア)と営業利益率の双方で8%を目指したのだが、ともに届かないことになりそうだ。そういった意味で、ゴーン経営の妙味であったコミットメントは、ここへきて微妙なものとなっているのだ。

ゴーン氏は、三菱自を加えた世界1,000万台規模のトータルアライアンス統括やルノーの経営強化に軸足を移すことになる。三菱自がV字回復を達成すれば、次のステップに進むことも考えられる。つまり、経営者としての実績と栄誉に多額な報酬を得た後は、第二の故郷であるブラジルで大統領となり、経済再建に取り組むという話が、ジョークだとばかりも言っていられない状況なのだ。

日産としては、西川新社長のもとでスタートする新中計の方向性で同社の真価が問われる。ゴーン日産18年からの大きな転機となるのも間違いない。三菱自を加え、ダイムラーとの提携の拡がりも求めるルノー/日産連合。その中核企業として、日産は立ち位置を確保していくことができるか、ということになろう。