奥飛騨温泉郷は岐阜県の山間部だが、新宿から直通高速バスがあり交通至便。中でも、バスターミナルがある平湯温泉は、硫黄泉と重曹泉の2種類の温泉を楽しめる。今回は豪雪地帯らしい本格的な雪見露天風呂を満喫できる、冬の平湯温泉の魅力を紹介しよう。
秘湯とホテルの良さを併せもつ"匠の宿"
平湯温泉は名古屋方面から上高地へ行く際の玄関口で、老舗の温泉宿も数多い。最新の和風ホテルでありながら、奥飛騨の秘湯風情も楽しめるのが「深山桜庵」だ。"匠の宿"の愛称通り、木造建築にこだわった低層ホテルで、特に温泉浴場の秘湯風情が素晴らしい。
豪雪地帯の奥飛騨らしく、雪見露天風呂からは一面の銀世界を一望できる。宿泊者は無料の貸切露天風呂では、夫婦やカップル水入らずで雪見風呂を満喫して、この時期ならではのぜいたくな気分を味わえる。
「深山桜庵では、温泉浴室で奥飛騨らしい秘湯風情を味わい、客室に戻れば近代的で快適なホテルの滞在を楽しめる。秘湯とホテルの良さを併せ持つ、ハイブリッド型の宿だ。
共立メンテナンス系列の宿ではお馴染みの「夜鳴きそば」を始め、大浴場での乳飲料サービスなど、各種飲食物が無料で振る舞われる一方で、客室係は配置しておらず、その分サービス料はなしとパンフレットに明記。メリハリの効いたサービスが個人客に好評で、真冬の奥飛騨でも続々とチェックイン客がやって来て驚かされる。
さらに、冬の奥飛騨でうれしいのは、多くの宿で冬季割引料金が登場することだ。「深山桜庵」も例外ではなく、宿泊料が1年で最もお手頃になる季節なので、断然オススメの時期だ。
●information
奥飛騨温泉郷・平湯温泉「匠の宿 深山桜庵」
住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯229
アクセス: バスタ新宿から高速バスで4時間40分。飛騨高山バスターミナルからは約1時間。平湯温泉バスターミナルから徒歩7分
日帰り入浴施設は宿泊&食事スポットとしても◎
続いて紹介する平湯温泉「ひらゆの森」は、露天風呂がたくさんあることで知られる日帰り入浴施設。冬は全て雪見露天風呂になるので、存分に雪見を楽しむことができる。白濁の硫黄泉で硫黄の香りも強く、温泉泉質も最高だ。
実は宿泊も可能で、手頃な料金で泊まれる。穴場の宿だが、観光シーズンの週末には予約が難しい程の人気だ。宿泊者は貸切風呂が無料で利用できるので、温泉好きには宿泊をオススメしたい。
貸切風呂は非常に変わった構造で、手前半分が内湯、奥半分が露天風呂になっている。神岡鉱山は梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞したことで一躍有名になったが、「ひらゆの森」では神岡鉱山で使用された大釜を釜風呂に再利用している。壮大な宇宙に思いを馳せて入浴しよう。
館内の食堂「もみの木」は奥まったところにあるが、フロントで申し出れば食堂だけでも利用させてもらえる。奥飛騨温泉郷には飲食店が非常に少なくコンビニすらないので、食事に困った時にはぜひ利用したい施設だ。
イチオシは「カルビ丼」(税込1,100円)で、甘口の自家製タレが絶品。飛騨牛の産地だけあり肉質もなかなかで、大満足の逸品だ。メニューが充実しているので、素泊まりで泊まって食事は「もみの木」で食べる、という常連が多いというのもうなずける。
●information
平湯温泉「ひらゆの森」
住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯763-1
アクセス: バスタ新宿から高速バスで4時間40分。飛騨高山バスターミナルからは約1時間。平湯温泉バスターミナルから徒歩3分
バスターミナルの中でも雪見露天風呂を
最後に紹介する平湯温泉バスターミナルは、「アルプス街道平湯」と呼ばれる商業施設になっており、大きな土産物屋やレストランが入居している。道路の向かいには観光案内所もあり、名実ともに平湯温泉の中心地だ。1階には無料で利用できる足湯もあるので、気軽に利用したい。
温泉が豊富な平湯らしく、バスターミナル三階には「パノラマ大浴場」があり、源泉かけ流しの本格的な温泉を楽しめる。内湯に加えて露天風呂もあり、外から見えないような構造になっているが、屋根のない部分には雪が積もって雪見露天風呂になる。
平湯温泉の泉質は「ひらゆの森」のような白濁硫黄泉と、「パノラマ大浴場」のような鉄分が多い褐色の重曹泉の2種類がある。2カ所所の温泉をめぐって、温泉泉質の違いを堪能したい。なお、冒頭に紹介した「匠の宿 深山桜庵」は、褐色の重曹泉タイプに近い単純温泉に分類される。「パノラマ大浴場」では3月31日まで、通常税込600円の入浴料が税込500円に割引される「冬の大感謝祭」を実施している。この機会を見逃さないようにしていただきたい。
●information
平湯温泉バスターミナル「アルプス街道平湯」パノラマ大浴場
住所: 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯628
アクセス: バスタ新宿から高速バスで4時間40分。飛騨高山バスターミナルからは約1時間。平湯温泉バスターミナル3階
無色透明の温泉が多い奥飛騨温泉郷だが、白濁の硫黄泉と褐色の重曹泉の両方が楽しめる平湯温泉は"おいしい"温泉地と言えるだろう。高速バスのターミナルもある交通至便な立地で、日帰り入浴施設も宿泊施設も充実。しかも、冬には多くの宿が割引料金になる。ぜひ一度、冬の奥飛騨温泉郷を訪れてみてほしい。きっと気に入り、また冬に行きたくなるに違いない。
筆者プロフィール: 藤田聡
温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。