ジャニーズ事務所所属のアイドル・A.B.C-Zの冠番組が面白いと話題だ。テレビ東京系バラエティ番組『ABChanZoo(えびちゃんズー)』(毎週土曜25:15~)はアイドルが体当たりで様々なことに挑んでいくという、一見正統派な作りに見えながら、挑む内容が「4時間ピンクレディーのUFOを踊り続ける」など、芸人でも挑戦しないだろうことをやり遂げるのだ。

12月3日深夜放送分からは、「『もっと全国の人たちに知ってもらいたい!』A.B.C-Zがイイコトをして「ありがとう」だけで900キロ先のゴールにたどり着けることが出来るのか!?」と題し、4週連続で瀬戸内海の「ありが島」を目指すという企画が始まる。

テレビ東京には「路線バスの旅」「トラック乗り継ぎの旅」など様々な旅企画があるが、「無銭」「乗り物手段なし」で、人から「ありがとう」と言われる度にスタッフから渡される500円で東京から瀬戸内海をめざすという、同局でも屈指の過酷なロケ。このような企画はどうやって生まれてくるのか、同番組の松澤潤プロデューサーに話を伺うと、裏には熱い思いがあった。

■松澤潤
1991年入社、これまでの担当番組は『ギルガメッシュないと』『MUSIX!』『ありえへん∞世界』『男子ごはん』など。現在は他に『日曜ビッグバラエティ』

金がないテレビ東京で知恵を絞れ

――松澤さんはこれまでもけっこうジャニーズさんの番組を担当されてきたんですね。

『愛ラブSMAP!』『愛LOVEジュニア』、デビュー前の滝沢秀明さんや嵐の皆さんが出られていた番組もありますし、ここ数年だと『ありえへん∞世界』『男子ごはん』もそうですね。ただ入社当初は、『ギルガメッシュないと』のADをやっていました。

ジャニーズさんとテレビ東京が向き合って次世代のアイドルを育成する番組の系譜がありまして、僕が担当していた番組もそうですし、もっと遡れば近藤真彦さんや光GENJIさんも出演されていた『ヤンヤン歌うスタジオ』などもありました。その延長線上に今、『ABChanZoo』があると捉えています。ジャニー喜多川社長からも、「予算がないテレビ東京だからこそ知恵を絞って、この子達を輝かせてくれ」と言われていますし、まだ他局の番組に出ていない、これからの人たちと向き合う気持ちで番組を作っています。

――『ABChanZoo』は、なかなかすごい企画をされているなということで、ぜひお話を、と思ったのですが、どういった経緯で企画が出てくるんですか?

もちろん会議を行って、放送作家やディレクターがやりたい企画を出すという、とても普通のやり方です(笑)。危険なこと、下品なことなどは却下しますが、「予測不能な企画」「他でやっていない企画」の2点が判断基準になっています。

注目いただいたUFOの企画も、最初にある作家が「4時間何かをやったら面白いんじゃないか」と言い出したら、他の誰かが「ピンクレディーのUFOをやってもらったら?」と続いて形になりました。「そういうのが第一声で出てくるものか?」とは思うんですけど(笑)。「無理じゃないか」という意見もありましたが、「彼らはいつも3時間コンサートをやっているんだから、できるんじゃないの?」という意見が大多数でした。

――十分すごい会議だと思います。

放送してみると、正直賛否分かれる企画もあるのですが、大体そういう感じで決まりますね。ただ2013年の番組開始当初からこうだったわけではなく、2015年の11月からスタッフが替わったのを機に大幅リニューアルしました。

――それは何か、理由があったんですか?

昔はA.B.C-Zが極真空手に挑戦するような"過酷な体験もの"や、サービスエリアを食べ歩く"グルメ情報もの"をやっていたんですよね。でも、それだと彼らの良さが出し切れていなかった。彼らの「どんな状況でも精一杯頑張る」という、バカみたいなポジティブさこそ、TVに向いている、見ている人を元気にすると思っていたんですが、どうしてもその良さを出し切れていませんでした。なんとなく、「誰がやってもいい番組になっているのかな?」と思っていました。

たとえば5人メンバーがいるなかで、3人はグルメのロケ、2人は電車でどこかへ……みたいなこともあって、そのやり方は効率が良いし、早くロケが終われば彼らもきっと他の仕事を入れられる。でもやっぱり5人で行こう、5人の良いところも悪いところも出る番組にしたいという思いが募りました。5人だと、ふだんの役割分担に近いものが出ると思うんですよね。