東京・中目黒といえば「目黒川」を連想する人がほとんどではないだろうか。川沿いには高感度なカフェやショップが軒を連ね、洗練された中目黒を象徴する景色を作り出しているエリアだ。
しかしこの街には、古くからその文化を育んできたもう1つの"川"がある。それは、鉄道が行き交う線路の真下・高架下の空間だ。目黒川と交差するように駅から伸びるこの"地上の川"とも言うべき空間は、かつて飲食店やギャラリーが根付き、中目黒の文化の先駆けとなった。
そんな中目黒の高架下に、今一度開発と再生の手が加わった。全長約700mの高架下空間は、東京急行電鉄により、11月22日11時から商業施設「中目黒高架下」としてグランドオープン。高架という大きな屋根の下に個性豊かな店舗が並ぶ、目黒川に並ぶ名所として生まれ変わったのだ。一部ではあるが、そこで出会える店舗を、新たな高架下空間と共に紹介しよう。
改札を出ると蔦屋書店が出迎える
中目黒駅の正面改札を出るとすぐに目に入るのが、山手通りを挟んで向こう側の「蔦屋書店」。蔦屋書店は、中目黒高架下で最も大きなテナントだ。店内には「スターバックス」も併設しており、カフェスペースのほか、読書や仕事に最適なワークカウンター、イベントを開催するラウンジなども備える。
そのまま奥に進むと、アパレル・雑貨を展開する「MHL.」や、フレンチトースト専門店の「LONCAFE STAND NAKAMEGURO」が。両店とも、中目黒限定のアイテムやメニューを用意している。
仕掛けが楽しい! アートなレストラン「PAVILION」
さらに進むと、高架下は「目黒川」と交差。川を渡った先に店舗を構えるのが「PAVILION」だ。
同店は「アート」と「ラブ」をテーマとしたレストランだ。店の入り口からしてアーティスティックというか、少しわかりにくいところにあるので初めて訪れる際は注意しよう。現代アート作品が並ぶ長いアプローチを抜けて店内に入ると、シュールで洗練された空間が広がる。
照明を抑えた店内は、小上がりや半個室、目黒川を臨むテラスなど計70席を備える。天井からスクーターがつり下がったような装飾は、映画『ローマの休日』を彷彿とさせる。2人用の狭小半個室「懺悔室」など、遊び心を加えた内装や席が特徴的だ。
「緑しかないサラダ」「黄しかないサラダ」「赤しかないサラダ」(各1,280円・税別)や「雪山豆富 オレンジマグマを忍ばせて」(780円・税別)など、コンセプトやネーミングにひねりが利いたメニューが多い。しかし、それ以上に特徴的なのは、同店の専用通貨「ROMAN」の存在だろう。
「ROMAN」は、3ROMAN:2,000円・6ROMAN:4,000円・10ROMAN:6,000円で引き換えられるコインだ。現金ではなくROMANでしか購入できないメニューが同店にはあり、そのどれもが独特! 10数種類から選べるセルフワインバーや、有名人がセレクトしたドリンク「ラブロマン酒-あの人の隠し酒-」(共に1ROMAN)、5杯分の「リトルシャンパンタワー」(5ROMAN)のほか、「失敗知らずのトランプ-次も二人で来たいから-」(1ROMAN)などのグッズも用意している。
「失敗知らずのトランプ」は、身もふたもない言い方をすれば次回来店時に使えるクーポンなのだが、そこには「次も必ずこの人と来よう」と思えるような、ある仕掛けが施されている。来店時にぜひ確かめていただきたい。
進化するカレー「井上チンパンジー」とは?
今度はきびすを返して、中目黒駅から祐天寺方面へと歩を進めてみよう。こちらは飲食店が連なるゾーンとなっており、気軽な立ち飲み屋やダイニングが多い。昼時や夕方には歩くだけでワクワクしそうなエリアだ。
中でも注目の店舗は、言わずと知れたダンス&ボーカルユニット・EXILEを擁するLDHグループが運営するカレー専門店「CURRY SHOP 井上チンパンジー」だ。全17種類のスパイスを使ったカレーは、550円の「プレーンカレー」を始めとして、手軽に立ち寄れる価格設定が魅力的。同店のイチオシは、生卵か目玉焼きのトッピングを選べる「生姜焼きカレー」(850円)だという。
同店のカレーは"常に進化を遂げるカレー"をテーマとしており、辛さは「人間(普通)」「井上(中辛)」「チンパンジー(辛口)」「原始猿(激辛)」の4段階から選べる。野菜の甘味たっぷりなルーは、しかし、「人間」でも後味がピリッとした大人のカレーという印象だ。トッピングの生卵以外は全品テイクアウトも可能なので、使い勝手の良さそうな店舗でもある。
唐揚で気軽な立ち飲み「めっちゃ らんまん堂」
「井上チンパンジー」の隣にあるのが、「めっちゃ らんまん堂」。看板メニューは、「塩」「しょうゆ」「バジルチーズ」「黒酢」「フレンチ」など10種類のフレーバーから選べる「唐揚」(390円)に、日本そばを使った「やき蕎麦」(580円~)だ。
店内はスタンディングが基本の立ち飲み式。時折、高架を通る電車の音が聞こえてくるのも心地良い。こちらも、昼夜を問わず気軽に立ち寄りたい店だ。
寒い夜は「炉端のぬる燗 佐藤」でしっぽり
腰を据えてじっくり飲みたい夜には、「炉端のぬる燗 佐藤」はいかがだろうか。
カウンターや小上がりの座敷など41席を備え、カウンターからは豪快な炉端焼きを眺めることができる。厨房には煙が立ち、店内は肉や野菜の焼ける香ばしい匂いに包まれる。種類豊富な日本酒と共に、その風情を楽しみたい。
同店ではランチメニューも展開しており、「豚丼」(800円~)、「本日の干物炭焼き」(1,000円)、「サーモンイクラ丼」(1,200円)と、味もさることながらボリュームの満足感が高い品ぞろえ。ちょっとぜいたくしたい日にもオススメだ。
どんな時でも、誰とでも楽しい高架下
いかがだっただろうか。今回紹介できた店舗は、「中目黒高架下」全28テナントのほんの一部。約700mに及ぶ高架下の冒険は、目黒川沿いの散策と同じくらい刺激に満ちたものになるはずだ。
これから多くの個性を育んでいくであろう「中目黒高架下」。1人でふらっと立ち寄っても、デートに利用しても、友人と連れ立って飲みに行っても、新旧の文化が共存する中目黒らしい楽しみ方ができる場所になるような気がした。
※税別表記があるもの以外、価格は全て税込。記事中の情報・価格は2016年11月時点のもの