秋から冬にかけて感染者が急増するRSウイルス感染症。「秋のインフルエンザ」と表現してもおかしくないほどの感染力の強さで、乳児を死に至らしめる肺炎を併発することもある。インフルエンザウイルスの流行とともに影を潜めてしまいがちだが、その恐ろしさは看過できないものがある。
本稿では、千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長・篠塚規医師の解説を元にRSウイルス感染症の予防や治療法などを紹介する。
重症化しやすい子どもの特徴
RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial virus infection)は、RSウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器の感染症を指す。生後1歳までに半数以上が、同2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると言われている。感染時の症状には発熱や鼻水、せき、のどの痛みなどがあるが、大半は風邪の症状のみにとどまる。
ただ、細気管支炎や肺炎といった呼吸に関わる合併症を伴うと、たちまち「恐怖の感染症」へと変貌(へんぼう)を遂げる。これらの合併症を患う確率は25~40%だとするデータもあり、呼吸困難によって入院が必要となることも。最悪の場合、命を落としてしまうケースもある。
感染時に重症化しやすい、特に注意が必要な子どもの特徴は以下の通り。
初感染した子ども……RSウイルスに対する抗体が体内にないと重症化しやすい
生後3カ月未満の乳児……生まれて間もない乳児はRSウイルスによって肺炎を発症しやすい
未熟児……未熟児は母体から得られる抗体が少なく、呼吸器官も十分に発達していない
特定の疾患を持っている子ども……肺や心臓などに疾患を抱えていたり異常があったりすると、重症化リスクが高まる
RSウイルス感染症は風邪と同じように何度も感染するが、3歳以降では風邪のような症状を呈するのみにとどまるなど、その危険度はグッと下がると考えられている。
「大人の場合で言えば、65歳以上の高齢者でなおかつ糖尿病の持病があるとか、がんで抗がん剤を使っていて免疫力が弱まっているといったケースでは重症化しやすいですね。重症時には乳児同様に肺炎・細気管支炎を起こしやすくなりますが、普通の成人ならば風邪で終わるのがほとんどでしょう」。