RSウイルス感染症は1歳以下の乳児にとっては危険だ

毎年秋ごろになると患者が増えだしてくる「RSウイルス感染症」という病気をご存じだろうか。主な患者は乳児が多いため、若年層にはあまりなじみがない疾患かもしれないが、実は最悪の場合は死に至ることもある恐ろしい感染症なのだ。

本稿では、千駄ヶ谷インターナショナルクリニックの院長・篠塚規医師の解説を元にRSウイルス感染症の原因や症状などを紹介する。

呼吸困難で入院が必要になる場合も

RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial virus infection)は、RSウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器の感染症を指す。RSウイルスは日本だけではなく世界中に分布しており、国立感染症研究所によると生後1歳までに半数以上が、同2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると言われている。

RSウイルス感染症による患者は秋から増え始め、冬や春先にまでウイルスが世の中に蔓延(まんえん)している。季節的に言えば、インフルエンザに先駆けて発生し、インフルエンザが流行しだすと徐々にその存在が目立たなくなる。

感染した際の症状は風邪に似ている。個人差はあるが、RSウイルスに感染してから2~8日、典型的には4~6日間の潜伏期間を経て発熱鼻水、せき、のどの痛みなどの症状が出てくる。「およそ8割方は、いわゆる風邪の症状で治まります」と篠塚医師は話す。

だが、細気管支炎や肺炎といった呼吸に関わる合併症を伴う事例もあり、この2つの存在こそがRSウイルス感染症の恐ろしさのゆえんだと篠塚医師は警告する。

「RSウイルス感染症では、高い確率で細気管支炎や肺炎になる人が出てきます。100人いれば、25人から40人はこの2つの合併症を発症するとされており、1,000人いれば、5人から20人は入院が必要とされています。細気管支炎になると、『ヒューヒュー』といった喘鳴(ぜんめい)が出るなど、重篤なぜんそく患者のような症状が現れて、呼吸が止まり死んでしまうこともあります」。

入院の主な理由は、酸素飽和度が下がることに伴う呼吸困難だ。通常の風邪が上気道で炎症を起こすのに対し、細気管支炎は下気道の炎症性疾患。多数に枝分かれした細い気道である細気管支にウイルスが入り炎症を引き起こすと、酸素交換が円滑にできなくなる。そのため、場合によっては人工呼吸器を装着するケースもあるという。

RSウイルス感染症が引き起こす症状


発熱 / 鼻水 / せき / のどの痛み / 喘鳴 / 細気管支炎 / 肺炎 / 呼吸困難

RSウイルス感染症は一見すると風邪と似ているだけに、特に1歳以下の子どもの様子の変化には注意が必要。せきや熱で苦しがっていたはずが、夜中に症状が進行して細気管支炎や肺炎を併発、朝に病院に連れて行こうとしたら既に呼吸が止まっていた――。こういった事例も実際に起こりうる。きちんと症状を見抜けないと、幼い命を失ってしまうリスクがある感染症だと大人がきちんと認識しておく必要がある。