『コンビニ人間』で、第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香氏が19日、東京・帝国ホテルで記者会見に臨み、「奇跡のような感じで信じられずフワフワしているのですが、とてもうれしいです」と喜びを語った。
受賞作は、長年にわたってコンビニバイトを続ける"コンビニ人間"が主人公のストーリー。村田氏自身も週3回、現役でコンビニのバイトを続けており、この日も勤務だったそう。芥川賞発表の日でも「今日は忙しい日だったので、普通通り頑張って働きました」と報告した。
芥川賞を受賞したことで、今後環境が大きく変わることも予想されるが、コンビニバイトを続けるかどうかについては「ちょっと店長に相談します」といい、可能なら働き続けたいとの考え。ちなみに、バイト先のコンビニの名前は「店長ストップがあるので、すいません」と非公開だ。
「コンビニは自分の聖域なので、小説にすることはないと思っていたのですが、なぜか急に書いてみようと思ったんです」という村田氏。それが良いことなのかどうかは分からないというが、「ずっと働いてきたコンビニっていうものに対する愛情を作品にできたことは、良かったなと思っています」と満足の表情を見せた。
選考委員の川上弘美氏は、コンビニでしか働けないという特異な人間を描くことで、逆に社会の普通ということのおかしさを浮き彫りにした点が評価につながったと講評。これを受け、村田氏は「私は人間が好きという気持ちで小説を書いてるので、人間の面白さとかおかしさとかを表現できていたらうれしいです」と感想を述べた。
また、同日発表された第155回直木賞を『海の見える理髪店』で受賞した荻原浩氏も、同所で会見に臨み、「ホッとしています。肩の荷が下りたような気持ちです」と第一声。先月に還暦を迎えたが、「いろんな新しいことにチャレンジしてもいいかなと考えています」と今後への意欲を示した。