北海道新幹線開業と同時に、並行在来線の旧JR江差線五稜郭~木古内間を引き継いで営業運転を開始した道南いさりび鉄道(いさ鉄)。日本旅行が企画するツアー列車「ながまれ海峡号」も好評で、8月分まではほぼ完売。9・10月分も順調に席が埋まりつつある。

道南いさりび鉄道「ながまれ号」外観

とはいえ、鉄道ファンではない一般の旅行者にとっては、ツアー列車以外ではなかなか乗る機会がないかもしれない。そこで今回、開業3カ月を迎えたいさ鉄に乗り、木古内駅から函館駅をめざすミニ旅行に出かけてみた。北海道新幹線に乗って北海道に上陸した後、終点の新函館北斗駅まで乗ってからアクセス列車で函館駅に向かうのではなく、ひとつ手前の木古内駅で降車し、いさ鉄に乗り換えて函館駅に向かう想定である。

なお、記事構成は木古内駅から函館駅に向かう片道としているが、実際には往復乗車したため、写真は往路と復路の両方が混ざっていることをあらかじめことわっておきたい。

いさ鉄木古内駅、新幹線開業後はローカル駅の雰囲気漂う駅に

スタート地点は木古内駅。北海道新幹線13往復のうち、8往復が停車する。駅のある木古内町は人口5,000人にも満たない小さな町だが、新幹線開業に合わせて今年1月に駅前に誕生した道の駅が大当たり。地域の特色ある産品の販売や充実した観光案内、イタリアンの巨匠・奥田政行シェフ監修のレストランなど、徹底した観光客受け入れ策が功を奏し、開業わずか4カ月あまりで町の人口の40倍超にあたる来館者数20万人を突破したという人気ぶり。函館圏でいま最も勢いのある町と言われているとかいないとか。

道南いさりび鉄道木古内駅

「道の駅 みそぎの郷きこない」

新幹線木古内駅改札

青函DCのフラッグ

そんな木古内町の玄関口となる木古内駅の新幹線の駅舎は、当然ながらまだピカピカである。駅構内には、7月1日から始まった「青森県・函館デスティネーションキャンペーン」(青函DC)のフラッグが掲げられていた。

新幹線木古内駅といさ鉄木古内駅は隣接しており、2階部分が通路でつながっている。まずは南側から2つの駅を見てみよう。

いさ鉄木古内駅と新幹線木古内駅

いさ鉄木古内駅と新幹線木古内駅の位置関係

正面から見ると横並びのようだが、実際にはいさ鉄木古内駅が手前にあり、その後ろがいさ鉄の線路。さらにその後方が新幹線駅となる。

次に、いさ鉄木古内駅の様子を見てみよう。南口から入り、エスカレーターで2階に上ると、木をふんだんに用いた落ち着きのある通路になっている。ここをまっすぐ進むと新幹線駅、右がいさ鉄木古内駅のきっぷうりば兼待合室。一歩足を踏み入れると、途端に年季を感じさせるローカル駅の雰囲気が漂う。ドア1枚隔てて何十年か時間が違うようだ。

新幹線といさ鉄をつなぐ通路と案内標示

いさ鉄木古内駅の待合室

窓口は閉鎖され、無人駅となっている

キヨスク跡の「キーコショップ」も営業していない

「キーコショップ」閉店のお知らせ

元はキヨスクだった「キーコショップ」には、3月31日で閉店したとの張り紙があった。どうやら3月26~31日の超期間限定ショップだったらしい。この後、張り紙に従って「道の駅 みそぎの郷きこない」に立ち寄り、木古内の特産品などを買い込んだ。

さて、そろそろいさ鉄木古内駅から列車が出発する時刻。木古内駅から函館駅まで片道1,110円。この日はツアー列車に使用される「ながまれ号」2両編成での運行だ。「ながまれ号」はキハ40形2両を観光列車として使用できるように改装した車両で、通常は定期列車として運行。ツアー列車として運行する際のみ、「ながまれ海峡号」の名称となる。

1,110円の片道きっぷを券売機で購入して乗車

右に新幹線駅があり、左側を貨物列車が走り抜ける、ここならではの光景

青い海と漁り火を表現した道南いさりび鉄道のロゴマーク(写真左)と行先標(同右)

道南いさりび鉄道の英語表記は「South Hokkaido Railway」。「いさりび」はどこへ…

「ながまれ」とは、「のんびりして」という意味の古い方言

定刻になり、木古内駅から「ながまれ号」が発車。気動車ならではの走行音と揺れが旅情を誘う。木古内駅からしばらくは海岸線沿いの景色が続く。